「親が最近のことをすぐ忘れてしまう」
「家族の顔を忘れることがあるのでは」
「認知症で記憶はどんな順番で失われていくの?」
大切な人の記憶が失われていく過程は、家族にとって大きな不安です。

実は、認知症で記憶を忘れる順番にはある程度のパターンがあります。時間・場所・人へと進む見当識障害や、近い記憶から遠い記憶へと失われる過程を理解することで、適切な対応と心構えができるんです。
この記事では、認知症で記憶を忘れる順番を詳しく解説します。時間から場所、そして人へと進む過程、家族を忘れていく順序、適切な接し方まで、わかりやすくお伝えします。
認知症で記憶を忘れる順番の基本パターン
認知症で記憶が失われていく過程には、ある程度の順番やパターンがあります。まずは基本的な流れを見ていきましょう。
時間から場所、そして人へと進む見当識障害

認知症の見当識障害は、「時間」→「場所」→「人」の順番で進むことが一般的です。
最初に失われるのが時間の感覚です。今日が何月何日なのか、今が朝なのか夜なのか、季節がわからなくなります。真冬なのに薄着で外に出ようとしたり、昼間なのに「もう寝る時間だ」と言ったりする行動が見られるようになるんです。
次に場所の見当識が失われていきます。住み慣れた自宅なのに「ここはどこ?」と尋ねたり、トイレの場所がわからなくなったり。外出すると帰り道がわからなくなり、徘徊につながる可能性もあります。
見当識障害の進行順序
【時間】今が何時か、何月何日か、季節がわからない
【場所】自宅の部屋、トイレの場所、帰り道がわからない
【人】知人の顔、家族の名前、自分が誰かわからない
最後に人の見当識が失われます。知人の顔がわからなくなり、やがて家族の名前も忘れていきます。最終的には、自分自身が誰なのかわからなくなることもあるんです。
近い記憶から遠い記憶へと失われる順番

記憶障害では、新しい記憶から順番に失われていく傾向があります。
数秒から数分前の出来事を覚えていられない「即時記憶」の障害が最初に現れます。さっき何を話していたのか忘れてしまい、同じことを何度も尋ねる。置いたばかりの物がどこにあるかわからなくなる。このような症状が初期段階で見られるんです。
次に、数分から数日前の「近時記憶」が失われます。昨日食べた食事の内容、数日前に会った人のこと、先週の出来事などを思い出せなくなります。この段階になると、日常生活への影響が明確になってきます。
症状が進行すると、数年前の出来事を含む「遠隔記憶」も失われていきます。結婚式のこと、子どもが生まれた時のこと、家族旅行の思い出など、大切な記憶が薄れていくんです。
体で覚えた記憶が最後まで残る理由

興味深いことに、手続き記憶は最後まで保たれやすいんです。
手続き記憶とは、体で覚えた動作や技能のことです。自転車の乗り方、箸の使い方、歯磨きの仕方など、繰り返しの練習で身についた記憶は、脳の別の部位に保存されているため、比較的長く残ります。
家族の名前を忘れてしまっても、ピアノが弾ける。昨日のことを覚えていなくても、自転車には乗れる。このような現象が見られるのは、記憶の種類によって保存される脳の場所が異なるからなんです。
ただし、認知症が進行すると、最終的には手続き記憶も失われていきます。着替えの仕方がわからなくなる、食事の仕方を忘れるといった段階になると、日常生活全般に介助が必要になります。
認知症で人を忘れる順番と家族への影響
家族にとって最も辛いのが、大切な人の顔や名前を忘れられることです。人を忘れる順番と、その心理的影響を見ていきましょう。
知人から家族へと忘れていく順序

人を忘れていく順番は、一般的に関係性の深さに反比例します。
最初に忘れられるのは、たまにしか会わない知人や遠い親戚です。次に、近所の人や友人の顔や名前がわからなくなります。頻繁に会う人ほど記憶に残りやすいため、毎日顔を合わせる家族は比較的遅くまで認識できるんです。
しかし、症状が進行すると、家族の名前も忘れていきます。孫の名前、子どもの名前、そして配偶者の名前。毎日一緒に暮らしている家族でさえ、やがて「誰?」と尋ねられるようになります。
ただし、この順番には個人差があります。同居している子どもより、若い頃の記憶に残る配偶者の方を長く覚えている場合もあるんです。
身近な人ほど遅く忘れる傾向がある理由

なぜ身近な人ほど記憶に残りやすいのでしょうか。
毎日顔を合わせることで、記憶が繰り返し更新されるからです。たまにしか会わない人は、最後に会った時の記憶しかありません。しかし、毎日一緒にいる家族は、日々新しい記憶が上書きされ続けるため、比較的長く認識できるんです。
また、感情を伴う記憶は残りやすい傾向があります。愛情、信頼、安心感といったポジティブな感情と結びついた人の記憶は、単なる知識としての記憶より強く残るといわれています。
記憶に残りやすい要因
接触頻度の高さ(毎日会う)、感情的な結びつきの強さ、長年の関係性、一緒に過ごす時間の長さ、声や匂いなど複数の感覚情報
ただし、毎日介護している家族が忘れられ、たまに来る孫の方を覚えているというケースもあります。これは、若い頃の記憶が強く残っているため、自分の子ども時代の記憶に孫を重ねている可能性があるんです。
家族を忘れられた時の心理的な衝撃

家族を忘れられることは、想像以上に辛い体験です。
「お母さん、私よ」と言っても「誰?」と返される。何十年も連れ添った配偶者に「あなた誰?」と尋ねられる。毎日献身的に介護しているのに、全く覚えてもらえない。このような経験は、深い喪失感と悲しみをもたらします。
さらに辛いのは、たまに会う親戚の方を覚えていて、毎日そばにいる自分を忘れているというケースです。「なぜ私だけ」という思いから、怒りや虚しさを感じてしまうこともあるでしょう。

忘れられることの悲しみは、一人で抱え込まないでください。認知症カフェや家族会で、同じ経験をした人と気持ちを共有することも大切ですよ。
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認知症の記憶障害における忘れる順番の詳細
記憶障害について、より詳しく理解していきましょう。それぞれの記憶がどのように失われていくのか見ていきます。
即時記憶と近時記憶が最初に失われる

認知症の初期段階で現れるのが、即時記憶と近時記憶の障害です。
即時記憶は、数秒から数分だけ保持される記憶のことです。電話番号を聞いてメモする前に忘れてしまう、今話していた内容を覚えていない、置いたばかりの物の場所がわからない。このような症状が最初に現れます。
近時記憶は、数分から数日の記憶です。昨日の夕食の内容、先週会った人のこと、数日前に買った物を忘れて同じ物を買ってしまう。日常生活での困りごとが増えてくる段階です。
この段階では、本人も物忘れに気づいており、不安を感じていることが多いです。メモを取る、カレンダーに書き込むなど、自分なりの対策を試みる様子が見られます。
エピソード記憶と意味記憶の消失過程

症状が進行すると、エピソード記憶と意味記憶も失われていきます。
エピソード記憶とは、個人的な体験の記憶です。結婚式のこと、子どもが生まれた時のこと、家族旅行の思い出など。これらの大切な記憶が徐々に薄れ、最終的には「そんなことあったかな」と首をかしげるようになります。
意味記憶は、言葉や物の意味に関する記憶です。「りんご」が果物であること、「赤信号」で止まること、トイレの使い方など。常識や知識として身についていたことを忘れていくんです。
この段階になると、会話のつじつまが合わなくなったり、日常生活での判断が難しくなったりします。介護者のサポートがより必要になってくる時期です。
手続き記憶が最後まで保たれる仕組み

他の記憶が失われても、手続き記憶は比較的長く保たれます。
手続き記憶は、体で覚えた動作や技能のことです。歯磨き、箸の使い方、自転車の乗り方など、繰り返しの練習で身についた記憶は、脳の「小脳」や「基底核」という部位に保存されています。これらの部位は、認知症の影響を比較的受けにくいため、最後まで機能が保たれやすいんです。
家族の名前を忘れても、ピアノを弾ける。昨日のことを覚えていなくても、編み物ができる。このような現象が見られるのは、記憶の種類によって保存される脳の場所が異なるからなんです。
認知症で忘れる順番を理解した上での接し方
忘れる順番を理解することで、より適切な接し方ができるようになります。具体的な方法を見ていきましょう。
記憶の段階に応じた適切なコミュニケーション

記憶障害の段階に応じて、コミュニケーションの方法を工夫しましょう。
即時記憶や近時記憶が失われている段階では、メモやカレンダーの活用が効果的です。視覚的な情報は記憶に残りやすいため、大きな文字で書いたメモをわかりやすい場所に貼っておくと良いでしょう。
エピソード記憶が失われてきたら、昔の写真を見ながら話すのが効果的です。遠い過去の記憶は比較的残っているため、若い頃の思い出話なら楽しく会話できることが多いんです。
段階別コミュニケーションのコツ
初期:メモやカレンダーの活用、繰り返しの確認
中期:昔の写真を活用、簡単な言葉で説明
後期:スキンシップ、表情や声のトーンで安心感を伝える
言葉での理解が難しくなってきたら、手を握る、優しく肩に触れるなど、スキンシップを大切にしてください。温かい感情は記憶より長く残るといわれています。
忘れられても責めない心構えの大切さ

最も大切なのは、忘れられても責めない心構えです。
「何度言ったらわかるの」「さっき話したでしょ」という言葉は、本人を傷つけてしまいます。覚えられないのは病気のせいであり、本人の努力不足ではありません。同じことを何度聞かれても、初めて聞いたかのように答える優しさが必要なんです。
また、「私のこと忘れたの?」と詰め寄るのも避けましょう。忘れられた悲しさは理解できますが、本人は自分でもどうすることもできません。責められることで、さらに不安や混乱が増してしまいます。
感情や関係性は記憶より長く残ることを知る

希望を持ってください。感情や関係性は記憶より長く残るといわれています。
名前は忘れても、「この人は優しい人」「一緒にいると安心する」という感覚は残りやすいんです。毎日献身的に介護している姿、優しく声をかける言葉、温かいスキンシップ。これらは確実に心に届いています。
「娘」として認識されなくても、「大切な人」として感じてもらえている。それは新しい形の絆かもしれません。記憶がなくなっても、愛情や信頼といった感情の記憶は、もっと深いところに残り続けるんです。

記憶が失われても、今この瞬間の笑顔や温かさは本物です。過去の関係にとらわれず、今の関係を大切にしてくださいね。
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認知症で忘れる順番を理解する。まとめ
認知症で記憶を忘れる順番には、ある程度のパターンがあります。見当識障害では「時間」→「場所」→「人」の順番で失われ、記憶障害では新しい記憶から順番に消えていくんです。

記憶障害では、即時記憶(数秒〜数分)が最初に失われ、次に近時記憶(数分〜数日)、遠隔記憶(数年単位)、意味記憶(言葉や概念)と進みます。体で覚えた手続き記憶は最後まで保たれやすいという特徴があります。
人を忘れる順番は、一般的に関係性の深さに反比例します。知人から忘れ始め、やがて家族の名前も忘れていきます。ただし、毎日顔を合わせる人ほど記憶に残りやすく、身近な人ほど遅くまで認識できる傾向があるんです。
家族を忘れられることは、想像以上に辛い体験です。しかし、忘れられても責めない心構えが大切です。覚えられないのは病気のせいであり、本人の努力不足ではありません。
記憶の段階に応じて、コミュニケーションの方法を工夫しましょう。初期にはメモやカレンダーの活用、中期には昔の写真を見ながらの会話、後期にはスキンシップを大切にしてください。言葉での理解が難しくなっても、温かい感情は伝わります。
希望を持ってください。名前は忘れても、「この人は優しい人」「一緒にいると安心する」という感覚は残りやすいんです。感情や関係性は記憶より長く残るといわれています。
忘れる順番を理解することは、適切な対応と心構えにつながります。ただし、この順番には個人差があることも忘れないでください。症状の進行は人それぞれ異なりますので、目の前の人をよく観察し、その人に合った接し方を見つけることが大切です。
認知症介護は長い道のりです。一人で抱え込まず、認知症カフェや家族会、専門家のサポートを活用してください。忘れられることの悲しみを共有し、支え合うことで、少しずつ前を向けるようになります。
記憶が失われても、今この瞬間の笑顔や温かさは本物です。過去の関係にとらわれず、今の関係を大切にしながら、その人らしい生活を支えていきましょう。
「情報はわかった。でも…私はどうすればいいの?」

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「最終的な判断は、ご家族で」
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