お母さんが同じ質問を10回目。さっき答えたばかりなのに。
頭では「認知症だから仕方ない」とわかっている。でも今日はもう無理。声を荒げてしまった。そんな自分が嫌で、涙が止まらなくなった。
「親の介護でイライラしてしまう」「優しくできない自分が最低だ」——そんな罪悪感に押しつぶされそうになっていませんか?
介護でイライラしてしまうのは、あなたが親を大切に思っているからこそ生まれる、当然の感情です。厚生労働省「令和3年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」によれば、養護者による高齢者虐待の被虐待者のうち、認知症の症状がある人は全体の約7割を占めています。それほど認知症介護は、誰もがイライラしてしまう状況なのです。
大切なのは、イライラしてしまう自分を責めることではなく、その原因を理解し、適切に対処すること。そして何より「一人で抱え込まない」選択肢を知ることです。
この記事では、親の介護でイライラしてしまう深層心理から、今すぐできる対処法、そして「介護しない勇気」という選択肢まで、実例をもとに解説します。
なぜ親の介護だと、こんなにイライラしてしまうのか
他人の介護なら冷静に対応できるのに、親が相手だとどうしてもイライラしてしまう。その理由は、私たちの深層心理にあります。
「親は死なない」という無意識の思い込み

親というのは、自分が生まれたときから傍にいて面倒を見てくれていた絶対的な存在です。変化しないことが前提にあるので、親子関係の如何にかかわらず、今までの親の在り方が自分の中の常識として完全に固まっています。
さらに、親子という境界線が曖昧な関係だからこそ、「甘え」や気のゆるしがあります。
「私ばかり負担している」という不公平感の正体

親の介護で多くの人が感じるのが「なぜ自分だけが」という強烈な不公平感です。
兄弟姉妹がいるにも関わらず、こんな理由で一人に負担が集中してしまいます。
よくある「言い訳」パターン
✕ 「近くに住んでいるから、あなたが見るべき」
✕ 「独身だから時間があるでしょ」
✕ 「仕事を辞めたなら、介護できるよね」
✕ 「私には小さい子どもがいるから無理」
このような理由で、介護の負担が特定の一人に集中してしまうケースは非常に多いのです。
夜間の見守りが必要な場合、十分な睡眠が取れずに慢性的な疲労状態に陥ります。体が疲れていると、些細なことでもイライラしやすくなる。普段なら気にならないような親の言動にも、過敏に反応してしまうようになるのです。
親の介護でイライラした時、今すぐできる3つの対処法
イライラした感情に襲われた時、その場でできる対処法を身につけることで、感情をコントロールし、冷静に対応できるようになります。
対処法①:6秒間、その場を動かない

6秒ルールの実践方法
1. イライラを感じた瞬間に心の中で「1、2、3、4、5、6」と数える
2. この間、深呼吸を心がけながら感情が落ち着くのを待つ
3. 慣れてくると「今、私はイライラしているな」と客観視できる
4. 6秒経過後、冷静に状況を判断して適切な対応を選択する
怒りやイライラの感情は、最初の6秒間がピークと言われています。この6秒間を乗り切ることができれば、感情的になって後悔するような言動を避けることができます。
対処法②:一度その場を離れる

感情が高ぶってしまった時は、無理に状況を収めようとせず、一度その場を離れることが重要です。
自然にその場を離れる理由
– 「ちょっとお茶を入れ直してきますね」
– 「洗濯物を取り込んできます」
– 「郵便物を確認してきます」
– 「トイレに行ってきます」
わずか3分でも、気分をリセットすることができます。
対処法③:感情を紙に書き出す

イライラした気持ちを言葉にして書き出すことは、感情を整理し、客観視するのに非常に効果的です。
【「イライラしてしまう自分」を責め続けていませんか?】
親の介護のイライラを根本的に軽減する方法
一時的な対処法だけでなく、介護のイライラを根本から軽減するためには、一人で抱え込まない体制を作ることが必要です。
家族間の役割分担と介護サービスの活用

親の介護でイライラを根本的に軽減するためには、一人で全てを抱え込まないことが最も重要です。兄弟姉妹がいる場合は、全員で介護について話し合う時間を設けましょう。
距離に関係なくできる役割分担の例
– 長男:経済的支援と重要な意思決定
– 長女:日常的な連絡とサービス手配
– 次男:月1回の訪問と緊急時対応
– 遠方の家族:介護用品の購入・配送、情報収集
「遠方にいるから何もできない」ではなく、それぞれができることを探してみてください。
「家族が介護をするのが当然」という思い込みを捨て、プロの力を借りることで、より質の高い介護を提供できます。
専門家への相談とレスパイトケアの重要性

介護のイライラを一人で抱え込んでいては、状況は改善されません。専門家に相談することで、客観的なアドバイスを受け、新たな解決策を見つけることができます。
「介護しない」という選択肢が、親を救うこともある
これは親を見捨てるという意味ではありません。直接介護をするのではなく、マネジメントに徹するということです。介護サービスを探し、適切な専門家に任せ、少し離れた場所から親を見守る。その方が、お互いにとって良い関係を保てることが多いのです。
施設入所後「いい顔をしている」という現実
罪悪感を手放すために知っておくべきこと
大切なのは「心の繋がり」です。毎日一緒にいても、イライラしながら接しているより、少し離れた場所から穏やかな気持ちで見守る方が、親にとっても幸せなことがあります。
施設入所後も関わり続ける方法
– 定期的に面会に行く
– 施設のイベントにボランティアとして参加する
– 週末に外出や外食に連れ出す
– 電話やビデオ通話で顔を見せる
無理を押して自分で抱え込もうとせず、信頼できる人を探して、その人に任せることに注力する。それが、親にとっても自分にとっても最善の選択になることがあるのです。

介護でイライラしてしまうのは、親を大切に思っているからこそ。完璧な介護者になる必要はありません。60点の介護で十分です。一人で抱え込まず、周りのサポートを活用してくださいね。
まとめ。60点の介護で、親にとっても自分にとっても最善を

この記事のポイント
親の介護でイライラしてしまうのは、決して恥ずかしいことでも親不孝なことでもありません。それは、親を大切に思っているからこそ生まれる、ごく自然な感情です。
イライラの原因は、「親は死なない」という無意識の思い込みや、「私ばかり」という不公平感など、複雑に絡み合っています。その原因を理解することで、自分を責めることなく、適切に対処できるようになります。
今すぐできる対処法として、6秒ルール、その場を離れる、感情を書き出すなどをご紹介しました。そして根本的な解決には、家族間の役割分担、介護サービスの活用、専門家への相談が欠かせません。
介護は一人でするものではありません。困った時、限界を感じた時は、遠慮なく専門家に相談してください。あなたが心身ともに健康でいることが、結果的に親にとっても最良の介護につながるのです。
さいごに。介護の悩みが消えないあなたへ
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仕事と親の介護の違い
– 仕事なら → 「認知症だからそういうもの」と割り切れる
– 親が相手だと → 「どこかでわかってくれるはず」と期待してしまう
その期待が裏切られるたびに、イライラが募っていくのです。