「お母さん」「誰か」「助けて」。同じ言葉を何十回、何百回と繰り返される日々。夜中も朝も、止まることのない声に、あなたの心は限界を迎えているかもしれません。
「なぜこんなに声を出し続けるのか」「いつまで続くのか」「もう耐えられない」。認知症の家族が声を出し続ける理由がわからず、理解できないことへの苦しみが、あなたを追い詰めているでしょう。
この記事では、認知症の方が声を出し続けるのはなぜか、その医学的・心理的な理由を「家族が理解できる言葉」で解説します。さらに、声を出し続ける本人の心の背景を知り、家族として今できる対処法、そして何よりも大切な、あなた自身の心を守る方法をお伝えします。
認知症で声を出し続けるのはなぜか。心の叫びを理解する
声を出し続ける行動には、必ず理由があります。それは単なる「困った行動」ではなく、本人からの必死のメッセージなのです。
記憶障害による繰り返しと不安の表現

認知症の方が声を出し続ける最も大きな理由は、記憶障害です。たった今話したことを忘れてしまうため、同じ質問、同じ呼びかけを繰り返します。本人にとっては、毎回が「初めて」なのです。
「さっき答えたでしょ」と言っても、本人にはその記憶がありません。何度聞いても答えが得られない、あるいは答えを忘れてしまう。この繰り返される不安が、さらに声を出し続けることにつながります。
また、記憶が失われることで、自分が今どこにいるのか、何をしているのかわからなくなります。その混乱と不安を和らげるために、声を出して誰かの存在を確認しようとするのです。返事が返ってくることで、「一人じゃない」という安心を得ようとしています。
言葉で伝えられない苦しみのサイン

認知症が進行すると、言葉で自分の状態を説明する能力が失われていきます。「お腹が痛い」「トイレに行きたい」「寒い」といった基本的なことさえ、適切に伝えられなくなります。
そのため、不快感や苦痛を「声を出す」という方法で表現するしかないのです。叫び声、うめき声、繰り返される呼びかけ。これらは全て、言葉にならない訴えなのです。
特に「失語」という症状がある場合、言いたい言葉が思い浮かばない、口から出てこないというもどかしさがあります。伝えたいことがあるのに伝えられない。このフラストレーションが、意味のない声や奇声として現れることもあります。
見当識障害が引き起こす混乱と恐怖

見当識障害とは、時間、場所、人物の認識ができなくなる症状です。今が朝なのか夜なのか、ここが自宅なのか病院なのか、目の前の人が誰なのかわからない。この根本的な混乱が、声を出し続ける大きな原因です。
想像してみてください。目が覚めたら知らない場所にいて、知らない人に囲まれている状況を。それがどれほど恐ろしいことか。認知症の方は、毎日このような恐怖の中にいるのです。
「ここはどこ」「家に帰りたい」「お母さんはどこ」という訴えは、この混乱から来ています。住み慣れた自宅にいても、そこが自宅だと認識できない。だから、助けを求めて声を出し続けるのです。
認知症の方が声を出し続ける具体的な理由
声を出し続ける背景には、様々な具体的な理由が隠れています。それを一つずつ理解していきましょう。
身体的な不快感や痛みを訴えている

声を出し続ける理由として見落とされがちなのが、身体的な不快感です。痛み、かゆみ、便秘、尿意、空腹、喉の渇き、暑さ寒さ。これらを言葉で表現できないため、声を出すことで訴えています。
特に便秘は、認知症の方に多い問題です。お腹の張りや不快感があっても、それを「便秘だ」と認識できず、ただ「苦しい」という感覚だけが残ります。その苦しみが、叫び声や繰り返される呼びかけとなって現れるのです。
また、加齢による聴力低下も関係しています。自分の声が聞こえにくいため、無意識に大きな声を出してしまうこともあります。周囲の反応が聞き取れないと、さらに声が大きくなる悪循環が生まれます。
チェックすべき身体的要因
・痛み(頭痛、腰痛、関節痛など)
・排泄の問題(便秘、尿意、失禁の不快感)
・空腹、喉の渇き
・室温の不快感
・衣服のきつさや肌触り
・かゆみや湿疹
・薬の副作用
孤独や不安から助けを求めている

認知症の方が最も恐れているのは、孤独です。記憶が失われ、時間の感覚がなくなると、5分前に家族と話していても、「もう何時間も一人だ」と感じてしまいます。
「誰かいないの」「お母さん」「助けて」という呼びかけは、この深い孤独感から来ています。誰かの声を聞きたい、誰かがそばにいることを確認したい。その切実な願いが、声を出し続けることにつながります。
また、責任感や義務感も声を出し続ける理由になります。「仕事に行かなきゃ」「子供の世話をしなきゃ」といった過去の記憶が蘇り、何かをしなければという焦燥感が、落ち着きのない声となって現れるのです。
夜間に声を出すことが多いのも、暗闇による不安の増大が関係しています。視覚情報が減ることで、さらに混乱と恐怖が強まり、助けを求める声が止まらなくなります。
環境の変化やストレスへの反応

認知症の方は、環境の変化に非常に敏感です。部屋の模様替え、新しい家具、来客、天気の変化、季節の変わり目。健常者にとっては些細なことでも、認識能力が低下している方には大きなストレスになります。
入院や施設入所、デイサービスの利用開始など、大きな環境変化があった後に声を出す頻度が増えることもあります。慣れない場所、知らない人々に囲まれた不安が、声となって表出されるのです。
また、家族のストレスや緊張も敏感に感じ取ります。介護者がイライラしていたり疲れていたりすると、その雰囲気が伝わり、本人の不安を増幅させます。すると、さらに声を出して注意を引こうとする悪循環が生まれます。

声を出し続けるのは、決してあなたを困らせようとしているわけではありません。本人なりの必死のコミュニケーションなんです。その背景を理解することが、対処の糸口になりますよ。
認知症で声を出し続ける時の家族の対処法
声を出し続ける理由を理解したら、次は具体的な対処法を実践していきましょう。
否定せず受け止める基本姿勢

声を出し続ける本人への対応で最も大切なのは、否定しないことです。「さっき言ったでしょ」「もう何回も答えた」「うるさい」といった言葉は、本人をさらに混乱させ、不安を増大させます。
たとえ100回目の同じ質問でも、「初めて聞かれた」ように答えることが理想です。難しいかもしれませんが、短く簡潔に、穏やかな声で答えることを心がけましょう。
「大丈夫ですよ」「そばにいますよ」「安心してください」。こうした安心感を与える言葉を繰り返すことで、声を出す頻度が減ることもあります。声のトーンも大切です。優しく、ゆっくりとした話し方が効果的です。
原因を探り安心感を与える方法

声を出し続ける背景にある原因を探ることが、根本的な解決につながります。身体的な不快感がないか、一つずつ確認していきましょう。
トイレに行きたいのではないか、お腹が空いているのではないか、暑すぎる・寒すぎるのではないか。衣服がきつくないか、どこか痛むところはないか。これらを丁寧にチェックし、問題があれば対処します。
環境を整えることも重要です。明るすぎず暗すぎない照明、適度な室温、静かすぎない程度の生活音。心地よい環境が、不安を軽減します。好きだった音楽を小さく流す、馴染みの写真を飾るなども効果的です。
また、身体に触れることも安心感を与えます。手を握る、肩に手を置く、背中をさする。優しいスキンシップは、言葉以上に「一人じゃない」というメッセージを伝えます。
環境調整のチェックリスト
・照明は適切か(明るすぎず暗すぎず)
・室温は快適か
・騒音や不快な音はないか
・トイレや水分補給は済んでいるか
・空腹ではないか
・衣服は快適か
・馴染みのあるものが視界にあるか
家族自身の心を守る距離の取り方

どれだけ理解しようとしても、声を出し続けられることは、家族にとって大きなストレスです。あなた自身の心を守ることも、同じくらい大切です。
物理的な距離を取ることを恐れないでください。別の部屋に移る、外に出る、トイレに逃げ込む。短時間でも声から離れることで、心はリセットされます。「少し休んでくるね」と伝えて、その場を離れることに罪悪感を持つ必要はありません。
心理的な距離も同様に重要です。声を出されるたびに真正面から受け止めていては、心が持ちません。「これは病気の症状だ」と自分に言い聞かせ、感情的にならない工夫が必要です。
イヤホンや耳栓を使うことも一つの方法です。完全に音を遮断するのではなく、音量を下げる程度でも、精神的な負担は軽減されます。「そんなことしていいのか」と罪悪感を持つかもしれませんが、あなたが倒れてしまっては、介護そのものが続けられなくなります。
専門家やサービスの力を借りる

家族だけで対応することが難しい場合、専門家の支援を受けることを躊躇しないでください。声を出し続ける症状は、薬物療法で軽減できることもあります。
かかりつけ医や認知症専門医に相談し、抗不安薬や睡眠薬の処方を検討してもらうことも選択肢です。ただし、薬には副作用もあるため、医師とよく相談することが大切です。
デイサービスやショートステイの利用も効果的です。環境が変わることで、一時的に声を出す頻度が減ることもあります。何より、家族が休息を取る時間を作ることが、持続可能な介護につながります。
訪問看護や訪問介護を利用すれば、専門職の目で状況を見てもらえます。家族では気づかない原因や対処法を、専門知識から提案してもらえることもあります。
限界を感じたら施設入所も視野に

夜間も昼間も声を出し続けられ、睡眠も取れない状態が続く場合、施設入所を検討することも必要です。これは決して親を見捨てることではありません。
グループホームや特別養護老人ホームでは、24時間体制で専門職が対応します。声を出し続ける症状にも慣れたスタッフが、適切にケアしてくれます。家族が疲弊して倒れるよりも、専門的なケアを受ける方が、本人にとっても良い選択になることがあります。
施設入所により、家族関係が改善することも多いのです。介護者としてではなく、家族としての穏やかな時間を持てるようになります。面会時には優しい言葉をかけ、手を握り、愛情を注ぐことに専念できるのです。
認知症で声を出し続けるのはなぜか:まとめ
認知症の方が声を出し続けるのは、記憶障害、不安、混乱、身体的不快感、孤独感など、様々な理由があります。それは決して意地悪や困らせようとしているのではなく、必死のコミュニケーションなのです。
記憶が失われることで、何度も同じことを聞き、不安を訴えます。言葉で伝えられない苦痛を、声を出すことで表現します。見当識障害により、どこにいるのか誰といるのかわからず、助けを求めて叫びます。
対処法としては、否定せず受け止め、原因を探り、安心感を与えることが基本です。身体的な不快感がないか確認し、環境を整え、優しい言葉とスキンシップで安心を伝えましょう。
しかし、最も大切なのはあなた自身の心を守ることです。物理的・心理的な距離を取り、専門家の支援を受け、限界を感じたら施設入所も視野に入れてください。
「なぜ声を出し続けるのか」という問いに対する答えは、「本人なりの必死のメッセージだから」です。その背景を理解することで、あなたの心の負担は少し軽くなるかもしれません。
しかし、理解したからといって、辛さがなくなるわけではありません。声を出し続けられる日々は、想像を絶する疲労をもたらします。その辛さを我慢する必要はないのです。
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