「親の介護をしたくない」「こんなことを思う自分は冷たい人間なのか」「でも正直、親の世話をするなんて考えただけで憂鬱になる」
このような複雑な気持ちを抱えている方は、決してあなただけではありません。内閣府の調査によると、介護に対して「負担感を感じる」と回答した人は約7割に上り、多くの人が介護に対して重い負担を感じているのが現実です。
親の介護をしたくないと感じることは、決して恥ずべきことではありません。複雑な親子関係、将来への不安、自分の人生への影響など、様々な要因が重なって生じる自然な感情です。この記事では、そんな気持ちを抱える方に向けて、現実的で建設的な対処法をお伝えします。
親の介護をしたくないと感じる理由と心理的背景
親の介護をしたくないと感じる理由は人それぞれですが、多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合っています。これらの理由を理解することで、自分の気持ちを整理し、適切な対処法を見つけることができます。
親との関係が悪い場合の複雑な感情

親の介護をしたくないと感じる最も深刻で複雑な理由の一つが、親との関係が良くない場合です。幼少期からの虐待、ネグレクト、精神的な支配、過度な期待やプレッシャーなど、親から受けた心の傷は成人になっても深く残り続けます。
特に毒親と呼ばれるような支配的で自己中心的な親に育てられた場合、子どもは長年にわたって精神的な苦痛を味わい続けてきました。「親なんだから大切にしなければ」という社会的な期待と、「この人に世話になりたくない」という本音の間で、深い葛藤を抱えているのです。
また、認知症の症状として現れる暴言や暴力、徘徊、不潔行為などに直面すると、「この人のために自分の人生を犠牲にするのか」という絶望感を抱くことも珍しくありません。特に一人っ子の場合、他に頼る兄弟もおらず、「人生が終わった」と感じてしまうほどの重圧を感じることがあります。
このような複雑な感情を抱くのは、決してあなたが冷たい人間だからではありません。むしろ、長年の心の傷と現実的な負担を冷静に評価できているからこそ生じる、自然で健全な反応なのです。
身体的・精神的負担への恐れと限界

親の介護をしたくない理由として、身体的・精神的負担への恐れも大きな要因となります。介護は想像以上に過酷で、介護者の心身に深刻なダメージを与える可能性があります。
身体的な負担では、腰痛、肩こり、膝痛などの慢性的な痛みや、睡眠不足による体調不良が挙げられます。要介護度が高くなると、移乗介助、入浴介助、排泄介助などの重労働が必要になり、介護者自身が身体を壊してしまうリスクが高まります。
精神的な負担はさらに深刻で、24時間体制での見守り、認知症による混乱への対応、将来への不安などが重なることで、うつ病や不安障害を発症する介護者も少なくありません。厚生労働省の調査では、介護者の約3割が「精神的な不調を感じている」と回答しています。
介護による身体的・精神的負担の具体例
・睡眠不足による判断力低下と体調不良
・重介護による腰痛や関節痛の慢性化
・24時間の見守りによる社会的孤立
・将来の見通しが立たないことへの不安
・自分の時間が全くないことへのストレス
・介護離職による経済的困窮のリスク
また、介護期間の長期化も大きな不安要素です。平均的な介護期間は約5年と言われていますが、場合によっては10年以上続くこともあります。「いつまで続くのか分からない」という先の見えない状況は、介護者に大きな精神的負担をかけます。
特に働き盛りの40代・50代で親の介護に直面した場合、キャリアの中断、収入の減少、自分の老後への備えができないなど、人生設計全体への影響を懸念するのは当然のことです。
経済的不安と将来への恐怖

親の介護をしたくないと感じる理由として、経済的な不安も非常に大きな要因となります。介護には想像以上に多くの費用がかかり、特に施設利用を考えた場合、月額20万円から40万円という高額な費用が継続的に必要になります。
在宅介護を選択した場合でも、介護用品の購入、住宅改修、介護サービスの利用料など、様々な費用が発生します。さらに、介護のために仕事を辞めざるを得なくなった場合、収入が途絶える一方で支出は増加するという最悪の状況に陥る可能性があります。
総務省の調査によると、介護離職による生涯収入の減少額は平均で約2,000万円にも上ります。自分の老後資金を貯める時期に、逆に貯蓄を取り崩さなければならない状況は、将来への深刻な不安を生み出します。
特に一人っ子の場合、これらの費用をすべて一人で負担しなければならないという恐怖感は計り知れません。「親の介護のために自分の人生が破綻してしまうのではないか」「結婚や子育てを諦めなければならないのか」といった将来への不安が、介護への拒否感を強めてしまうのです。
また、親の資産状況が不明な場合、「介護費用をどこから捻出すればよいのか」という不安も大きくなります。認知症が進行してから慌てて財産管理の問題に直面し、さらに負担が増加するケースも少なくありません。

親の介護をしないことの法的・社会的影響
親の介護をしたくないと感じていても、法的な責任や社会的な影響について正しく理解しておくことは重要です。適切な知識を持つことで、感情的な判断ではなく現実的な対処法を選択することができます。
扶養義務の実態と法的責任の範囲

民法877条第1項では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。つまり、法律上は親の扶養義務があることは事実です。しかし、この扶養義務の実態と範囲について正しく理解することが重要です。
扶養義務には「生活扶助義務」と「経済的扶養義務」の2つがあります。生活扶助義務とは、直接的な身の回りの世話を行うことですが、これは必ずしも家族が直接行う必要はありません。適切な介護サービスを手配し、安全な環境を提供することでも義務を果たすことができます。
重要なことは、扶養義務は「扶養能力の範囲内で」という条件があることです。経済的余裕がない場合や、精神的・身体的に介護が困難な場合は、その状況に応じて義務の内容や程度が調整されます。
また、兄弟姉妹がいる場合は、扶養義務は分担されます。一人だけがすべての責任を負う必要はなく、それぞれの経済状況や家庭事情に応じて負担を分けることが可能です。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、客観的な基準で負担割合を決めることもできます。
介護放棄による刑罰のリスクと回避方法

親の介護を完全に放棄した場合、刑法上の「保護責任者遺棄罪」に問われる可能性があります。この罪は3月以上5年以下の懲役が科される重い犯罪です。さらに、放棄により親が死亡や重傷を負った場合は、保護責任者遺棄致死罪(3年以上20年以下の懲役)や保護責任者遺棄致傷罪(3月以上15年以下の懲役)となる可能性があります。
しかし、これらの刑罰が科されるのは「完全に放棄」した場合であり、適切な方法で対処すれば刑罰のリスクを回避することができます。
重要なのは「何もしない」のではなく、「適切な代替手段を講じる」ことです。直接的な介護ができない場合でも、介護保険サービスの申請支援、施設の見学や契約、定期的な安否確認など、親の安全と健康を守るための行動を取ることで、法的責任を果たすことができます。
また、経済的困窮がある場合は、その状況を適切に証明し、生活保護制度の利用や自治体の支援制度を活用することで、「扶養能力の範囲を超えている」ことを示すことも重要です。
経済的扶養だけでも義務を果たせる現実

多くの人が誤解していることですが、扶養義務は必ずしも直接的な身体介護を行うことを要求していません。経済的な支援を行い、適切な介護環境を整えることでも、法的な義務を十分に果たすことができます。
経済的扶養の具体的な方法としては、以下のようなものがあります:
- 介護施設の利用料を支払う
- 在宅介護サービスの費用を負担する
- 介護用品や医療機器の購入費用を支援する
- 住宅改修費用を負担する
- 生活費の一部を支援する
経済的扶養による解決パターン
・親を介護施設に入所させ、月額費用を負担する
・訪問介護サービスを手配し、利用料を支払う
・デイサービスやショートステイの費用を支援する
・介護保険の自己負担分を肩代わりする
・医療費や生活費の一部を継続的に支援する
このような経済的支援を行うことで、親は安全で適切なケアを受けることができ、法的な扶養義務も果たされます。直接的な介護をしないことで生じる罪悪感があるかもしれませんが、プロの介護サービスを利用する方が、安全性や専門性の面でむしろ親のためになることも多いのです。
重要なことは、親の尊厳と安全を守りつつ、自分自身の生活も維持できるバランスの取れた方法を見つけることです。経済的余裕がある場合は、この方法が最も現実的で持続可能な解決策となることが多いでしょう。

親の介護をしたくない時の現実的な解決策
親の介護をしたくないと感じている場合でも、完全に放置することはできません。しかし、直接的な介護以外にも様々な選択肢があります。現実的で持続可能な解決策を見つけることで、親の安全を確保しながら自分自身の生活も守ることができます。
家族間での役割分担と責任の分散

親の介護をしたくない場合の最初の選択肢は、家族間での役割分担です。扶養義務は直系血族と兄弟姉妹にあるため、一人だけが全ての責任を負う必要はありません。
兄弟姉妹がいる場合は、それぞれの経済状況、家庭事情、居住地などを考慮して、公平な役割分担を話し合いましょう。必ずしも平等に分担する必要はなく、それぞれができることを担当するという柔軟な考え方が重要です。
話し合いがうまくいかない場合や、兄弟姉妹間で大きな意見の違いがある場合は、家庭裁判所の調停を利用することも可能です。第三者である調停委員が介入することで、感情的な対立を避け、客観的な基準で負担を分けることができます。
一人っ子の場合でも、配偶者の協力を得たり、親族(従兄弟、姪甥など)に相談したりすることで、負担を分散できる可能性があります。また、親の兄弟姉妹が健在な場合は、その子ども(いとこ)にも相談してみる価値があります。
重要なのは、「自分一人で抱え込まない」ことです。最初から「誰も助けてくれない」と決めつけず、まずは家族・親族に現状を説明し、協力を求めてみましょう。
介護サービスと施設利用の活用方法

現代では、家族だけで介護を行うのではなく、プロの介護サービスを活用することが一般的になっています。適切なサービスを利用することで、親は専門的なケアを受けられ、家族は介護負担から解放されます。
在宅介護サービスを利用する場合は、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなど、様々なサービスを組み合わせることができます。これらのサービスを適切に活用すれば、家族が直接的な介護をしなくても、親の日常生活を支えることが可能です。
利用可能な介護サービス一覧
・訪問介護:身体介護、生活援助
・訪問看護:医療的ケア、健康管理
・デイサービス:日中の通所サービス
・ショートステイ:短期間の宿泊サービス
・福祉用具レンタル:介護用品の貸与
・住宅改修:バリアフリー化の支援
施設入所を検討する場合は、親の要介護度や医療的ニーズ、家族の経済状況に応じて適切な施設を選択します。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護付き有料老人ホーム、グループホームなど、様々な選択肢があります。
施設選びの際は、複数の施設を見学し、サービス内容、費用、立地、職員の対応などを総合的に評価することが重要です。また、入居待ちが長い施設もあるため、早めの情報収集と申し込みが必要です。
費用面では、介護保険の利用や自治体の独自支援制度、低所得者向けの軽減制度なども活用できます。親の年金や貯蓄で費用を賄えない場合は、生活保護制度の利用も検討しましょう。
専門家への相談で心の負担を軽減

親の介護をしたくないという気持ちを一人で抱え込んでいると、罪悪感や不安が増大し、適切な判断ができなくなってしまいます。専門家への相談を通じて、客観的なアドバイスを受けることで、心の負担を軽減し、現実的な解決策を見つけることができます。
地域包括支援センターは、介護に関する総合的な相談窓口として、全国の市区町村に設置されています。介護保険の申請支援、サービス事業者の紹介、家族の悩み相談など、様々なサポートを受けることができます。
心理的な負担が大きい場合は、カウンセリングサービスの利用も効果的です。親子関係の複雑さ、介護への拒否感、将来への不安など、様々な感情を整理し、健全な心の状態を保つためのサポートを受けることができます。
法的な問題については、弁護士や司法書士に相談することで、扶養義務の範囲や兄弟姉妹間の負担分担、相続問題なども含めて総合的なアドバイスを受けることができます。

専門家への相談では、「親の介護をしたくない」という気持ちを正直に話すことが大切です。多くの専門家がこのような相談を受けており、決して珍しいことではありません。一人で悩まず、プロのサポートを受けながら最適な解決策を見つけましょう。
オンライン相談サービス「ココマモ」では、このような介護に対する複雑な感情や家族関係の悩みを、専門相談員に匿名で相談することができます。「親の介護をしたくない」という気持ちを否定せず、現実的で建設的な解決策を一緒に考えてくれます。初回20分の無料相談で、まずは気軽に話してみることから始めてみてください。
重要なことは、一人で抱え込まずに適切なサポートを受けることです。専門家のアドバイスを通じて、親の安全を確保しながら自分の人生も大切にできる方法を見つけることができます。

まとめ

親の介護をしたくないと感じることは、決して恥ずべきことではありません。複雑な親子関係、将来への不安、経済的負担への恐れなど、様々な要因が重なって生じる自然な感情です。重要なのは、この感情を否定するのではなく、現実的で建設的な解決策を見つけることです。
法的には扶養義務がありますが、これは必ずしも直接的な身体介護を意味するものではありません。経済的支援や適切なサービスの手配により義務を果たすことができ、家族間での役割分担や専門的なサービスの活用により、親の安全を確保しながら自分の生活も守ることが可能です。
特に一人っ子の場合や親子関係に問題がある場合は、心理的な負担が大きくなりがちです。しかし、現代では様々な支援制度やサービスが整備されており、家族だけで介護を抱え込む必要はありません。
最も大切なことは、親の安全と尊厳を守りつつ、自分自身の人生も大切にすることです。「親の介護をしたくない」という気持ちを罪悪感に変えるのではなく、より良い介護環境を整えるための動機として捉え直すことで、建設的な解決策を見つけることができるでしょう。
一人で悩まず、地域包括支援センターやケアマネジャー、カウンセラーなどの専門家に相談しながら、あなたにとっても親にとっても最善の方法を見つけていきましょう。適切なサポートを受けることで、介護という課題を乗り越えながら、自分らしい人生を歩み続けることができるのです。
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