親の介護でお金がない時の対処法。公的支援制度と負担軽減策について

お金・生活

「親の介護が必要になったけれど、正直お金が足りない」「介護費用を払い続けられるか不安で眠れない」「家族でお金を出し合っても限界がある」

親の介護でお金がないという悩みは、決して珍しいことではありません。厚生労働省の調査によると、介護にかかる費用は平均で月8万円程度、総額では数百万円に及ぶことも多く、多くの家族が経済的な負担に苦しんでいるのが現実です。

しかし、「お金がないから介護ができない」「家族が全額負担しなければならない」と諦める必要はありません。日本には、経済的に困難な状況にある介護者や要介護者を支援するための様々な公的制度や支援策が用意されています。

親の介護でお金がない時でも、適切な制度を活用すれば負担を大幅に軽減できます。今回は、そうした支援制度の活用方法から具体的な費用削減のコツまで、包括的にお伝えします。

親の介護でお金がない時に知っておくべき基本知識

介護費用の負担は家族がすべて背負う必要はない

親の介護でお金がない状況に直面した時、まず理解しておくべき重要なポイントは、「家族がすべての介護費用を負担する法的義務はない」ということです。

日本の民法では確かに親子間の扶養義務が定められていますが、これは「経済的・生活的に可能な範囲内での支援」を意味しており、自分や家族の生活を犠牲にしてまで親の介護費用を負担する必要はありません。

具体的には、子どもの家庭の生活費、教育費、住居費、将来への貯蓄などを削ってまで親の介護費用を捻出する義務はないのです。「親の面倒は子どもが見るべき」という道德的プレッシャーを感じる方も多いでしょうが、法的にも社会制度的にも、介護は「社会全体で支え合うもの」という考え方に変わってきています。

また、親自身の年金や貯蓄がある場合は、まずそれらを介護費用に充てることが原則です。親の資産を使い切ってから、初めて子どもの経済的支援を検討すれば良いのです。

「お金がないから親を見捨てることになる」という罪悪感を持つ必要はありません。適切な公的支援を受けながら、家族ができる範囲でサポートすることが、現代の介護の基本的な考え方なのです。

お金がない状況で一番最初にすべき相談先

親の介護でお金がない状況になった時、一人で悩まず最初に相談すべき機関があります。それは「地域包括支援センター」です。

地域包括支援センターは、各市区町村が設置している高齢者のための総合相談窓口で、介護に関するあらゆる相談を無料で受け付けています。ここには社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、経済的な問題も含めて包括的にサポートしてくれます。

相談時には、以下の情報を準備しておくとスムーズです:

  • 要介護者(親)の基本情報:年齢、要介護度、現在の健康状態、利用している介護サービスの内容
  • 経済状況:親の年金額、貯蓄の有無、家族の収入状況、現在の介護費用の内訳
  • その他:介護期間の見通し、家族の協力体制、地域的な制約など

地域包括支援センターでは、あなたの状況に応じて利用可能な制度や支援策を具体的に案内してくれます。また、必要に応じてケアマネジャーや他の専門機関との連携も図ってくれるため、一つの窓口で包括的な支援を受けることができます。

既に介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに相談することも有効です。ケアマネジャーは介護サービスの調整だけでなく、経済的な負担軽減についても豊富な知識を持っています。

重要なのは、「恥ずかしい」「迷惑をかける」といった遠慮をせず、できるだけ早い段階で相談することです。状況が悪化してからでは選択肢が限られてしまうため、お金の不安を感じた時点で相談することをお勧めします。

介護費用の平均額と負担が重くなる要因

親の介護でお金がない状況を避けるためには、介護費用の実態を正しく理解しておくことが重要です。

生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる費用は月平均で約8.3万円、介護期間の平均は約5年間となっており、総額では約500万円程度の費用がかかる計算になります。ただし、これは平均的な数字であり、実際の費用は要介護度や利用するサービス、住んでいる地域によって大きく変動します。

費用が特に高額になりやすいケースをご紹介します。要介護度が高い場合(要介護4・5)は、必要な介護サービスが多くなるため月10万円を超えることも珍しくありません。有料老人ホームなどの民間施設を利用する場合は、月15-30万円程度の費用がかかることが一般的です。

また、在宅介護でも様々な費用が発生します。介護保険サービスの自己負担分に加えて、おむつ代、介護用品の購入費、住宅改修費、通院時の交通費、介護者の食事代などが積み重なり、思った以上に高額になることがあります。

認知症の場合は、徘徊対策のための見守りサービスや、専門的なデイサービスの利用など、追加的な費用が発生することも多く見られます。

遠距離介護の場合は、定期的な帰省費用、現地での宿泊費、緊急時の交通費などが加わり、経済的負担がさらに重くなります。

これらの費用負担を軽減するためにも、次にご紹介する公的支援制度を積極的に活用することが重要なのです。

親の介護のお金がない時に活用できる公的支援制度

高額介護サービス費制度で自己負担額を軽減する方法

親の介護でお金がない時に、最初に知っておくべき重要な制度が「高額介護サービス費制度」です。この制度は、介護保険サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。

この制度の最大のメリットは、所得に応じて月の自己負担上限額が設定されていることです。具体的な上限額は以下の通りです:

  • 一般的な所得の世帯(年収約770万円未満):月44,400円
  • 住民税非課税世帯で年金収入等80万円以下:月15,000円
  • その他の住民税非課税世帯:月24,600円

つまり、どれだけ多くの介護サービスを利用しても、これらの金額を超えた分は後から払い戻されるのです。

申請手続きは比較的簡単で、市区町村の介護保険担当窓口で「高額介護サービス費支給申請書」を提出するだけです。一度申請すれば、その後は条件を満たす月について自動的に払い戻しが行われます。

ただし、この制度にはいくつかの注意点があります。介護保険の対象外サービス(保険外サービス)の費用や、施設の居住費・食費は対象外となります。また、申請から実際の払い戻しまでには2-3ヶ月程度の時間がかかるため、一時的には全額を支払う必要があります。

医療費も同時にかかっている場合は、「高額医療・高額介護合算制度」も利用できます。これは医療費と介護費の自己負担額を合算して、年間の上限額を超えた分が払い戻される制度です。70歳以上で一般的な所得の場合、年間の合算上限額は56万円となっています。

介護保険負担限度額認定証と施設利用時の費用軽減

親の介護でお金がない状況で特に活用したいのが「介護保険負担限度額認定証」です。この制度は、低所得の方が介護施設を利用する際の居住費と食費を大幅に軽減してくれる制度です。

通常、介護施設の居住費と食費は介護保険の対象外のため全額自己負担となりますが、この認定を受けることで負担額が大幅に軽減されます。例えば、特別養護老人ホームの個室を利用する場合、通常は居住費だけで月6-7万円程度かかりますが、認定を受けると月1-2万円程度まで軽減されます。

認定の条件は比較的厳しく設定されています。住民税非課税世帯であることが基本条件で、さらに預貯金等の資産が一定額以下であることが必要です。単身世帯の場合は預貯金等1,000万円以下、夫婦世帯の場合は2,000万円以下という基準があります。

申請に必要な書類には、介護保険負担限度額認定申請書、同意書、通帳の写し(過去2ヶ月分)、その他資産を証明する書類などがあります。市区町村によって必要書類が若干異なる場合があるため、事前に確認することをお勧めします。

この制度の大きなメリットは、施設入所時の経済的負担を劇的に軽減できることです。月10万円以上の負担軽減となるケースも多く、「お金がないから施設入所は無理」と諦めていた方にとって大きな助けとなります。

ただし、認定には有効期限があり(通常1年間)、更新手続きが必要です。また、所得や資産状況に変化があった場合は、速やかに届け出る必要があります。

生活保護制度による介護費用のサポート

親の介護でお金がない状況が深刻な場合、最後のセーフティネットとして「生活保護制度」があります。生活保護制度には「介護扶助」という項目があり、介護保険サービスの自己負担分や、介護保険の対象外となる介護サービスの費用についても支援を受けることができます。

生活保護の「介護扶助」では幅広いサポートが受けられます:

  • 介護保険サービスの自己負担分:全額支給
  • 移送費:通院時の交通費等、必要に応じて支給
  • 福祉用具・住宅改修費:介護保険の限度額を超えた分について支援

このように、介護に関わる様々な費用について包括的な支援を受けることができます。

生活保護の申請条件は、世帯の収入が「最低生活費」を下回り、預貯金や不動産などの資産も一定額以下であることです。親子や兄弟などの扶養義務者からの援助も期待できない状況であることも条件の一つですが、扶養義務者自身の生活に支障がある場合は扶養義務は免除されます。

申請手続きは、住所地を管轄する福祉事務所で行います。申請時には、収入や資産の状況を詳しく調査されるため、通帳、保険証書、年金の通知書などの書類を準備しておく必要があります。

生活保護を受給することに対して抵抗感を持つ方も多いのですが、これは国民の権利として法律で保障されたセーフティネットです。「税金で生活するのは申し訳ない」と感じる必要はありません。困った時に適切な支援を受けることで、親子ともに人間らしい生活を維持することができるのです。

また、生活保護受給中でも、状況が改善すれば保護を廃止することができます。一時的な困窮状態を乗り越えるための制度として活用することも可能です。

お金がない時の介護費用を抑える具体的な方法

費用の安い介護施設や在宅サービスの選び方

親の介護でお金がない時には、同じサービスでもより費用の安い選択肢を探すことが重要です。まず、介護施設について見てみましょう。

最も費用が安いのは「特別養護老人ホーム(特養)」です。月の利用料は6-15万円程度で、前述の負担限度額認定を受ければさらに安くなります。ただし、入居待ちが長いことが多いため、早めの申し込みが必要です。

「介護老人保健施設(老健)」も比較的費用が安く、月8-17万円程度で利用できます。リハビリに重点を置いた施設なので、身体機能の維持・改善を図りたい場合に適しています。

有料老人ホームを選ぶ場合は、入居一時金の有無に注目してください。入居一時金なしの施設を選ぶことで、初期費用を大幅に抑えることができます。また、都市部ではなく地方の施設を選ぶことで、月額費用を3-5万円程度安くできる場合があります。

在宅サービスでも費用を抑える工夫があります。デイサービスでは、半日利用と一日利用で費用が大きく異なるため、必要最小限の利用時間に調整することで負担を軽減できます。訪問介護では、身体介護と生活援助で料金が異なるため、本当に必要なサービスのみを依頼することが重要です。

地域密着型サービスも費用対効果が高い選択肢です。小規模多機能型居宅介護や認知症対応型デイサービスなどは、大規模な施設よりも費用が安く設定されている場合が多くあります。

介護用品についても、購入ではなくレンタルを活用することで費用を抑えられます。車椅子、介護ベッド、歩行器などは介護保険でレンタルできるため、月1-3割の自己負担で利用できます。

自治体独自の支援制度と貸付制度の活用

親の介護でお金がない時に見落としがちなのが、各自治体が独自に実施している支援制度です。これらの制度は自治体によって内容が大きく異なるため、お住まいの地域で利用できる制度を詳しく調べることが重要です。

多くの自治体で実施されているのが「紙おむつ支給事業」です。要介護度が一定以上の高齢者に対して、月数千円分の紙おむつを無料で支給してくれる制度です。年間で見ると数万円の節約になるため、積極的に活用したい制度です。

「家族介護慰労金」を支給している自治体もあります。これは、要介護度の高い高齢者を在宅で介護している家族に対して、年数万円の慰労金を支給する制度です。介護保険サービスをあまり利用せずに家族で介護している場合に支給されることが多くあります。

「福祉タクシー券」や「ガソリン券」を支給している自治体では、通院や外出時の交通費負担を軽減できます。月数千円分の券が支給されるため、定期的な通院が必要な場合には大きな助けとなります。

経済的に困窮している場合は、「生活福祉資金貸付制度」も利用できます。この制度では、低所得世帯や障害者世帯、高齢者世帯に対して、福祉費や緊急小口資金を低利で貸し付けてくれます。介護に必要な福祉用具の購入費や住宅改修費なども対象となります。

社会福祉協議会が窓口となる「福祉資金貸付」では、介護サービスを受けるために必要な費用や、一時的な生活資金を借りることができます。連帯保証人がいる場合は無利子、いない場合でも年1.5%という低金利で利用できます。

これらの制度を活用するためには、まず市区町村の福祉担当窓口や社会福祉協議会に相談することが第一歩です。申請に必要な書類や条件について詳しく説明してもらい、利用可能な制度をすべて確認してみてください。

親の資産を活用した資金調達方法

親の介護でお金がない場合でも、親自身の資産を活用することで資金を調達できる可能性があります。ただし、これらの方法は慎重に検討し、専門家のアドバイスを受けてから実行することが重要です。

最も一般的なのが「リバースモーゲージ」です。これは、親が所有する自宅を担保にして金融機関から融資を受ける制度で、親が亡くなった後に自宅を売却して借入金を返済する仕組みです。月々の返済は利息のみで、元本は相続時に一括返済となるため、介護期間中の資金的な余裕を作ることができます。

「リースバック」という方法もあります。これは親の自宅を不動産会社に売却し、その後は賃貸として住み続ける制度です。まとまった資金を確保できる上、住み慣れた家を離れる必要がありません。ただし、月々の家賃が発生することと、将来的に家賃が上昇する可能性があることは理解しておく必要があります。

親が加入している生命保険の「契約者貸付制度」も活用できます。解約返戻金の一定範囲内で資金を借りることができ、手続きも比較的簡単です。ただし、借入額に対して利息がかかることと、保険金額が減額される可能性があることは注意が必要です。

親の預貯金や有価証券がある場合は、これらを介護費用に充てることも可能です。ただし、成年後見制度を利用している場合は、家庭裁判所の許可が必要な場合があるため、事前に確認が必要です。

重要なのは、これらの資産活用方法にはそれぞれメリットとデメリットがあることです。将来の相続に影響を与える可能性もあるため、家族全員で十分に話し合い、必要に応じてファイナンシャルプランナーや弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

また、親の認知症が進行している場合は、法的な手続きが複雑になる可能性があるため、早めの検討と準備が重要です。

まとめ

親の介護でお金がない状況に直面しても、決して絶望する必要はありません。日本には、経済的に困難な状況にある介護者と要介護者を支援するための多様な制度とサポート体制が整備されています。

最も重要なのは、「家族だけですべてを背負い込む必要はない」ということを理解することです。高額介護サービス費制度、介護保険負担限度額認定証、生活保護制度などの公的支援を適切に活用すれば、介護費用の負担を大幅に軽減することができます。

また、自治体独自の支援制度や貸付制度、親の資産を活用した資金調達方法など、様々な選択肢があることも知っておいてください。大切なのは、一人で悩まず、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門家に早めに相談することです。

お金の不安は介護者にとって大きなストレス要因となりますが、適切な情報と支援を得ることで、その不安を軽減し、親にとっても家族にとっても最適な介護の形を見つけることができるはずです。

「親の介護でお金がない」という状況は、あなただけの問題ではなく、社会全体で支え合うべき課題です。遠慮することなく、利用できる制度やサービスを積極的に活用し、無理のない範囲で介護に取り組んでいきましょう。そうすることで、親の尊厳を保ちながら、家族みんなが安心して生活できる環境を築くことができるのです。

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