親の最期をどこで迎えさせてあげるべきか、
そのとき家族は何をすればいいのか。
介護施設や在宅で行われる「看取りのケア」について、具体的にイメージできている方は少ないかもしれません。看取りケアは医療行為ではなく日常生活の支援が中心となるため、終末期医療とは異なる性質を持っています。
この記事では、看取りのケアが実際にどのような内容なのか、家族としてどう関わればよいのかを詳しく解説していきます。
看取りのケアとは何を指すのか

看取りケアの基本的な定義
看取りのケアとは、医師から余命が数週間から数ヶ月と診断された方が、人生の最期まで尊厳を持って穏やかに過ごせるよう支援する包括的なケアを指します。治療による延命を目的とせず、本人の「その人らしさ」を最優先に考えた日常生活の支援が中心となるのが大きな特徴です。
2006年に介護保険制度で「看取り介護加算」が新設されて以降、介護施設での看取りケアは急速に広がりました。現在では特別養護老人ホームの7割以上が看取りケアを実施しており、病院だけでなく施設や在宅で最期を迎える方が年々増加しています。
看取りケアが始まる3つの時期

看取りケアには明確な3つの段階があり、それぞれの時期で本人や家族への支援内容が変わっていきます。医師が「回復不可能な状態」と判断してから始まるのが一般的です。
【安定期】
症状が比較的落ち着いている時期。本人の意向確認や家族との話し合いを重ねながら、今後の方針を決めていく段階です。この時期に本人が望む最期の形を丁寧に聞き取ることが、その後のケアの質を左右します。
【不安定期】
歩行が困難になり車椅子の利用が増える、食欲が低下するなど心身の状態が徐々に悪化していく時期。転倒リスクが高まるため、ケアプランの見直しが必要になります。
【看取り期】
食事や水分がほとんど摂れなくなり、眠っている時間が長くなる時期。死亡日の1週間前頃から始まることが多く、24時間体制での丁寧な観察とケアが求められます。
看取りケアと緩和ケア・ターミナルケアの違い

終末期のケアには似たような言葉がいくつかあり、混同されがちです。それぞれの違いを理解しておくと、本人に適したケアを選択しやすくなります。
近年ではこれらのケアを一体的に提供する施設も増えており、医療的アプローチと生活支援を組み合わせた質の高いケアが実現されつつあります。
看取りのケアで行われる具体的な内容

身体的ケアの実際
看取りケアにおける身体的ケアは、基本的に医療行為を行わず、日常生活の支援を通じて苦痛を和らげることに重点を置きます。本人の体調や意向に合わせて、できるだけ自然な形でケアを提供していきます。
食事介助では、飲み込む力が弱くなった方に対して食べ物を細かく刻んだりペースト状にするなど、無理なく食べられる形態に調整します。食べる量が減っても本人のペースを尊重し、食事の時間自体が苦痛にならないよう配慮することが大切です。
清潔保持では入浴が難しくなった場合、清拭や部分浴で対応します。口腔ケアも感染症予防と快適さの維持のために欠かせません。排泄介助では尊厳を損なわないよう、プライバシーに十分配慮しながら丁寧に行います。
精神的ケアとその人らしさの尊重

看取り期は不安や恐怖を感じやすい時期であり、精神面への丁寧なアプローチが欠かせません。何気ない日常会話や挨拶も、孤独感を和らげる大切なケアの一つです。
環境面の配慮も重要で、音・光・温度・湿度を本人が快適と感じる状態に調整します。馴染みの音楽を流したり、思い出の写真を飾ったりすることで、安心感が生まれる場合もあります。
また、その人の人生観や価値観を尊重する「スピリチュアルケア」も看取りケアの大きな柱です。宗教的な儀式を望む方にはそれを支援し、家族との時間を大切にしたい方にはその機会を十分に確保します。
家族支援とグリーフケア

看取りケアは本人だけでなく、家族への精神的サポートも重要な役割です。家族は大切な人との別れを前に、不安・悲しみ・罪悪感など複雑な感情を抱えています。
ケアスタッフは定期的に家族と面談し、本人の現状や今後の見通しを丁寧に説明します。「何かできることはないか」という家族の思いに応えるため、本人との時間の過ごし方や声のかけ方などを具体的にアドバイスします。
死別後のグリーフケアも看取りケアの一環です。故人の生前の様子や最期の穏やかな表情などを家族に伝え、遺族が悲しみを受け入れ前を向けるよう支援します。必要に応じてグリーフケアの専門機関を紹介することもあります。
看取りケアを受けられる場所と選び方

在宅での看取りケア
在宅での看取りケアは、住み慣れた我が家で最期を迎えられるという大きなメリットがあります。家族が身近にいる安心感や、自分のペースで過ごせる自由さは何物にも代えがたいものです。
訪問看護師や訪問介護士、かかりつけ医が定期的に訪問し、24時間体制でサポートします。緊急時には電話相談できる体制も整っており、家族だけで抱え込む必要はありません。
ただし家族の介護負担は大きく、仕事との両立が難しい場合もあります。在宅看取りを選択する際は、訪問サービスを十分に活用し、家族が休息を取れる時間を確保することが継続の鍵となります。
介護施設での看取りケア

特別養護老人ホームやグループホーム、有料老人ホームなどの介護施設では、専門スタッフが24時間常駐している安心感があります。家族は介護の負担から解放され、本人との時間を大切に過ごすことに集中できます。
施設によって看取りケアの方針や体制は大きく異なります。入居前に必ず確認すべきポイントは、看取りケアの実績、医師や看護師の配置体制、夜間の対応方法、家族が付き添える時間などです。
また、施設で看取りを希望していても、本人の状態が施設の対応範囲を超えた場合は病院へ搬送される可能性があります。どのような状況まで施設で対応可能かを事前に確認しておくことが重要です。
病院での看取りケア

病院での看取りは、医療処置が必要な場合や急変時の対応が求められる場合に選択されます。医師や看護師が常駐しているため、症状の急激な変化にも迅速に対応できる安心感があります。
ただし病院は治療を目的とした場所であるため、面会時間が制限されたり、家族が付き添える時間が限られたりする場合があります。また入院費用は在宅や施設に比べて高額になりがちです。
近年では病院での死亡率は減少傾向にあり、国の方針としても看取りは介護施設や在宅で行うよう推進されています。本人や家族が望む最期の形を実現するため、早めに関係者と相談しておくことが大切です。
【親の最期をどう支えるか、迷っていませんか?】

看取りケアにかかる費用と経済的支援
在宅看取りケアの費用
在宅での看取りケアでは、訪問看護・訪問介護・医師の往診などのサービスを組み合わせて利用します。介護保険を利用すれば、自己負担は1割から3割に抑えられます。
訪問看護を週3回利用した場合、月額4万円前後かかりますが、1割負担なら月4,000円程度です。往診は1回あたり2万円から3万円かかるものの、高額療養費制度を活用すれば月の上限額は所得に応じて5万7,600円程度となります。
ただし介護ベッドや車椅子などのレンタル費用、医療用品の購入費、交通費などは別途必要です。トータルで月5,000円から2万円程度の自己負担を見込んでおくとよいでしょう。
施設看取りケアの費用と看取り介護加算

介護施設での看取りケアには、通常の施設利用料に加えて「看取り介護加算」が算定されます。この加算は死亡日を起点に45日前から算定され、1日あたり1,000円から3,000円程度が加算されます。
看取り介護加算は、施設が24時間体制で看取りケアを提供するための費用です。医師や看護師との連携強化、家族への説明時間の確保、職員の研修費用などに充てられます。
介護保険の自己負担割合(1割から3割)が適用されるため、実際の負担額は加算額の1割から3割となります。施設の種類や要介護度によって総額は異なりますが、月数万円程度の追加負担を見込んでおくとよいでしょう。
経済的負担を軽減する制度

看取りケアの経済的負担を軽減するため、さまざまな公的制度が用意されています。高額療養費制度は医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度で、所得に応じて月額の上限が設定されています。
高額介護サービス費制度は、介護サービスの自己負担額が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。世帯の所得に応じて月額上限が決まっており、低所得世帯ほど負担が軽減されます。
また自治体によっては独自の助成制度を設けている場合もあります。お住まいの地域包括支援センターやケアマネージャーに相談し、利用できる制度を確認しておくことをお勧めします。
看取りケアで大切にしたいこと

本人の意思を尊重するアドバンス・ケア・プランニング
看取りケアで最も重視されるのは、本人の意思を最大限尊重することです。そのために重要なのが「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という取り組みです。
ACPとは、本人が意思表示できるうちに、今後の治療やケアについて家族や医療・介護スタッフと繰り返し話し合うプロセスのことです。「どこで最期を迎えたいか」「延命治療を希望するか」「誰に看取られたいか」など、本人の価値観や希望を確認していきます。
一度決めた内容も、心身の状態や気持ちの変化に応じて見直すことができます。大切なのは、本人の意思が変化することを前提に、何度でも話し合いを重ねることです。
多職種連携による質の高いケア

看取りケアは一人の専門職だけで完結するものではなく、医師・看護師・介護職・ケアマネージャーなど多職種が連携して初めて質の高いケアが実現します。
医師は病状の評価や医療的判断を行い、看護師は日々の健康観察や症状管理を担当します。介護職は日常生活の支援を通じて本人の小さな変化を察知し、ケアマネージャーは全体のコーディネート役として各専門職をつなぎます。
定期的なカンファレンスで情報を共有し、本人の状態に応じてケア内容を柔軟に調整していくことが、その人らしい最期を支えることにつながります。家族もチームの一員として、本人の希望や価値観を伝える重要な役割を担っています。
家族が後悔しないために

看取りケアにおいて、家族が後悔しないために大切なのは、できることとできないことを明確にし、無理をしすぎないことです。在宅であれ施設であれ、プロに任せるべきところは任せ、家族は本人との時間を大切にすることに集中するべきです。
「もっとこうしてあげればよかった」という後悔を抱える家族は少なくありません。しかし完璧な看取りは存在せず、その時その時でベストを尽くすことが大切です。専門職に相談しながら、家族自身の心身の健康も守りつつケアに関わることが、結果的に本人にとっても良い看取りにつながります。
また看取り後の振り返りも重要です。ケアスタッフと共に、本人の最期の様子や穏やかだった瞬間を振り返ることで、家族の悲しみが少しずつ癒されていきます。
看取りのケアを支える社会の取り組み
看取りケアの需要増加と課題

超高齢社会を迎えた日本では、看取りケアの需要が年々増加しています。2023年の統計では、病院で亡くなる方が最も多いものの、介護施設や自宅で最期を迎える方の割合は増加傾向にあります。
しかし看取りケアを提供できる施設や専門家は不足しており、地域によって大きな格差があるのが現状です。また核家族化の進行により、在宅での看取りを希望しても家族の負担が大きすぎて実現できないケースも少なくありません。
国は病床の機能分化を進め、病院では治療を行い、看取りは介護施設や在宅で行う方針を打ち出しています。看取り介護加算の創設もその一環であり、今後ますます施設や在宅での看取りケア体制の充実が求められます。
これからの看取りケアに必要なこと

質の高い看取りケアを実現するには、専門職の教育と育成が欠かせません。若い世代の職員は死に立ち会う経験が少なく、看取りケアに不安を感じることも多いため、施設内での定期的な研修が重要です。
また見守りシステムやバイタル通知機器などのテクノロジーの活用も、看取りケアの質向上に貢献します。夜間の急変をいち早く察知できれば、適切な対応が可能になります。
さらに地域全体で看取りケアを支える体制づくりも必要です。医療機関・介護施設・在宅サービス事業者が連携し、本人や家族の希望に応じて柔軟にサービスを提供できる仕組みが求められています。
看取りのケアで大切な人らしい最期を:まとめ

看取りのケアは、人生の最終段階を迎えた方が尊厳を持って穏やかに過ごせるよう支援する包括的なケアです。医療行為ではなく日常生活の支援を中心とし、身体的・精神的ケアに加えて家族支援も重要な柱となります。
在宅・施設・病院のいずれで看取りを行うかは、本人の希望と家族の状況を総合的に考えて決めることが大切です。経済的な負担については介護保険や各種制度を活用することで軽減できます。
何より大切なのは、本人の意思を尊重し、その人らしい最期を支えることです。アドバンス・ケア・プランニングを通じて本人の希望を確認し、多職種が連携しながら質の高いケアを提供する。そして家族も無理をしすぎず、専門職の力を借りながら大切な時間を過ごす。これが後悔のない看取りにつながります。
超高齢社会を迎えた今、看取りケアは誰もが向き合う可能性のあるテーマです。早めに情報を集め、家族で話し合い、いざというときに慌てないよう備えておくことが、本人にとっても家族にとっても安心につながるでしょう。
さいごに。介護の悩みが消えないあなたへ
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実は、多くの介護家族が同じ悩みを抱えています。
そこに足りないのは「今後どのように行動していくべきか」というあなた自身の判断軸です。
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