「徘徊を止めたいのに、どうすれば」「行方不明になったら命に関わる」そんな不安を抱えていませんか。
認知症による徘徊は、介護家族の最大の心配事です。警察庁令和6年データでは、認知症による行方不明者が年間1万8,121人に達しました。これは全行方不明者の21.9%を占める数字であり、2021年の1万7,636人から485人増加しています。
重要なのは、徘徊には必ず本人なりの目的があるという事実です。周囲から見れば「あてもなく歩いている」ように見えても、本人にとっては「家に帰る」「仕事に行く」「トイレを探す」といった明確な理由があります。
この記事では、認知症の徘徊対策として予防・環境整備・技術活用の3層アプローチを解説します。統計データに基づく現状理解から、生活リズムの安定化、GPS等の対策グッズ、発生時の対応方法、地域連携まで、包括的な対策を学びましょう。
認知症の徘徊とは―統計から見る深刻な現状
まず、認知症の徘徊がどれほど深刻な問題なのか、統計データから正確に理解しましょう。
年間1万8,000人が行方不明に―徘徊の統計

警察庁生活安全局が発表した令和6年(2024年)における行方不明者の状況によると、認知症による行方不明者は18,121人に達しています。これは全行方不明者82,563人のうち21.9%を占める数字です。
2021年には17,636人だった認知症による行方不明者は、2024年には18,121人へと増加しており、増加傾向が続いています。高齢化の進行とともに、この数字はさらに増え続けると予測されます。
令和4年のデータでは、行方不明の原因・動機として疾病関係が24,719人(構成比29.1%)で最も多く、そのうち認知症またはその疑いによるものが18,709人(構成比22.0%)でした。つまり、行方不明者の約5人に1人は認知症が原因なのです。
認知症による行方不明者統計
2021年:17,636人
2024年:18,121人(全行方不明者の21.9%)
増加傾向:2021年比で約485人増加
発見率:約98.8%が所在確認されるが、死亡事故も
徘徊による具体的な危険性とリスク

認知症の徘徊には、命に関わる深刻な危険が伴います。
最も多いのが交通事故です。認知症の方は判断力が低下しているため、信号が赤でも横断歩道を渡ろうとしたり、車道に突然飛び出したりします。2007年には愛知県で、徘徊中の認知症男性(当時91歳)が列車にはねられて死亡する事故も発生しています。
転倒による骨折も深刻です。高齢者の場合、骨折がきっかけで寝たきり状態になることが多く、そのまま要介護度が一気に上がってしまいます。
夏場は熱中症や脱水症状、冬場は低体温症のリスクが高まります。徘徊中に帰り道がわからなくなり、長時間歩き続けて衰弱し、命の危機に陥るケースも少なくありません。
さらに、水辺で溺れる、山林で滑落するなどの事故も報告されています。夜間や早朝など人目につかない時間帯の徘徊は、発見が遅れるため特に危険度が高いのです。
徘徊の原因―認知症の中核症状と周辺症状

徘徊は認知症の周辺症状(BPSD)の一つです。周辺症状とは、記憶障害などの中核症状を基盤として、環境や心理的要因が加わって現れる症状のことです。
徘徊の主な原因は、記憶障害と見当識障害です。記憶障害により、今どこにいるのか、なぜここにいるのかを忘れてしまいます。見当識障害により、自分がいる場所や時間、人との関係性が認識できなくなるのです。
アルツハイマー型認知症では、過去の記憶が鮮明に残るため、若い頃住んでいた家や以前の職場に「帰ろう」とします。脳血管性認知症では、集中力の欠如や情緒不安定を引き起こす「せん妄」が原因となり、特に夜間に徘徊が起きやすくなります。
レビー小体型認知症では、「幻視」が原因です。存在しない人や物から逃げるように歩き回る行動が、徘徊とみなされます。
認知症の徘徊対策―予防のための生活習慣改善
徘徊対策の第一層は、徘徊が起きにくい環境を作る予防策です。生活習慣の改善が基盤となります。
生活リズムの安定化で夜間徘徊を防ぐ対策

認知症の徘徊対策として最も基本的なのが、規則正しい生活リズムの確立です。
早寝早起きを心がけ、毎日同じ時間に起床・就寝・食事をすることで、昼夜逆転を防ぎます。昼夜逆転が起きると、夜間の徘徊が増えてしまうため、生活リズムを整えることは極めて重要です。
日中は適度な運動を取り入れましょう。散歩やラジオ体操など、無理のない範囲で身体を動かすことで、エネルギーを適度に消耗させます。エネルギーがあり余っていると、「外に出たい」という衝動が強くなり、徘徊につながりやすくなります。
運動は心地よい疲労感をもたらし、夜間の良質な睡眠にもつながります。睡眠の量と質を確保することは、認知症の進行抑制にも効果があると言われています。
また、三食しっかり食べる、適度に水分補給する、お通じを良くすることも重要です。身体的な不調(空腹、脱水、便秘など)が徘徊のきっかけになることがあるためです。
居場所感の創出―役割と趣味で徘徊対策

「ここが自分の居場所だ」という感覚を持てることが、徘徊対策として非常に効果的です。
何もすることがなく、話し相手もいなければ、「自分の居場所ではない」「ここはどこだ」と疑い始め、外に出ようとしがちになります。
簡単な家事や手作業を一緒に行いましょう。洗濯物をたたむ、野菜を切る、食器を拭くなど、できることを手伝ってもらうことで、「ここで必要とされている」という実感が生まれます。
趣味活動も有効です。園芸、編み物、塗り絵、パズルなど、集中できる活動があると、充実感や達成感を味わえます。楽しめる趣味があることが、「ここが居場所だ」という感覚につながるのです。
デイサービスの利用も検討しましょう。日中に外出の機会を持ち、他者との交流や活動に参加することで、日常的な外出欲求が満たされ、徘徊が減少することがあります。
ストレスと不安の軽減が徘徊対策の鍵

不安や孤独感、ストレスなどの心理的要因が徘徊を引き起こすケースも少なくありません。
環境の変化は認知症の方にとって大きなストレスです。新しい住環境や施設に移ったり、日常生活のルーティンが変わったりすると、不安や混乱が生じ、徘徊が起きやすくなります。
できるだけ環境を大きく変えないことが大切です。介護が必要な状態になっても、本人が慣れ親しんだ環境で過ごせるよう工夫しましょう。
家族や知人の顔が認識できなくなり、「見知らぬ人がいる」と不安になって家を飛び出すこともあります。穏やかに接し、安心できる雰囲気を作ることが重要です。
認知症の徘徊対策―環境整備と検知システム
第二層の対策は、徘徊を早期に検知するための環境整備です。技術を活用した対策グッズが有効です。
玄関センサーとチャイムで外出を即座に検知

徘徊対策として最も基本的なのが、人感センサーの設置です。
玄関や出入り口に人感センサーを設置すると、認知症の方が通過した際に光や音で通知してくれます。家事をしていて外出に気づかなかった場合でも、すぐに察知できるため、早期発見につながります。
チャイムを設置するのも効果的です。玄関のドアを開けるとチャイムが鳴る仕組みにしておけば、深夜でも外出をすぐに知ることができます。
離床センサーも有用です。ベッドのマットレスの下や、起きた時に必ず足をつく場所に設置するマットで、重さが変わったときに通知してくれます。寝ていることが多い方や、深夜の徘徊対策として効果的です。
ただし、センサー類は通知に気づかなければ素通りされてしまう可能性があるため、注意が必要です。また、窓から出てしまうケースもあるため、玄関だけでなく窓周辺の対策も検討しましょう。
GPS端末で居場所を追跡―徘徊対策の切り札

徘徊対策として最も効果が高いとされるのが、GPS端末の活用です。
GPS端末を認知症の方に持ってもらうことで、人工衛星の電波を利用して居場所をリアルタイムに特定できます。万が一外出したことに気づかなくても、スマートフォンやパソコンから現在地を確認し、すぐに迎えに行けます。
GPS端末には様々なタイプがあります。靴に装着するタイプは、身につけることを忘れる心配がほとんどありません。インソールタイプや中敷きの下に設置するものがあり、本人が気づかないため取り外される心配もありません。
キーホルダー型は、バッグや小物を日常的に持ち歩く方に適しています。腕時計型やブレスレット型は、オシャレなデザインのものもあり、普通のアクセサリーとして身につけられます。
最近では、介護保険の福祉用具貸与対象として認定されているGPS機器もあり、自治体によっては介護保険を利用して月1,000円程度でレンタルできます。
GPS端末のメリット
日本全国どこにいても居場所を把握可能
設定した範囲を越えたときだけ通知設定も可能
捜索時に警察や近隣住民と連携しやすい
早期発見により事故リスクを大幅軽減
名札と連絡先カードで身元確認を容易に

万が一の時に備えて、衣類や靴、持ち物には名前と連絡先を書いたカードをつけておきましょう。
たとえ自分で名前や住所が言えなくなっても、保護した方から連絡をもらえる可能性が高くなります。カードは目立たないように襟の裏や服の内側、靴の中などにつけます。いつも持ち歩くバッグがある場合は内側のポケットに入れておくのも良いでしょう。
自治体が配布する「見守りシール」も活用しましょう。QRコードで本人情報に連絡できる識別シールで、衣服や持ち物に貼ることで、行方不明時の早期発見・保護に役立ちます。
自尊心が傷つかないように、本人にはわからないように工夫することが大切です。
【認知症の徘徊対策に悩んでいませんか?】
認知症の徘徊対策―発生時の正しい対応方法
第三層の対策は、徘徊が発生した時の適切な対応です。この対応が本人との信頼関係を左右します。
叱らず傾聴―共感対応が徘徊対策の基本

徘徊から戻ってきた際、最も重要なのは叱らないことです。
徘徊は本人にとって目的のある行動です。「家に帰る」「仕事に行く」など、明確な理由があって外出しています。それを頭ごなしに叱ったり、否定したりすると、本人は混乱し、不安が増してさらに徘徊が悪化する可能性があります。
まずは優しく理由を聞きましょう。「どこに行きたかったの?」「何か困っていることはある?」と穏やかに尋ね、本人の言葉に耳を傾けます。
認知症の方は叱られた内容は忘れても、そのときの恐怖感や嫌な気持ちは残ります。「この環境にいると嫌な気持ちになる」という意識につながり、安心できる環境を求めて徘徊するという悪循環を招く恐れがあるのです。
気をそらす・付き添う徘徊対策のテクニック

外出しようとする兆候が見られた際は、気をそらす工夫が有効です。
「お茶を飲もう」「一緒にテレビを見よう」「写真を見ませんか」など、別の活動に誘ってみましょう。注意を他のことに向けることで、外出への衝動が和らぐことがあります。
「おなかの調子が悪くてトイレに行きたい」「何かを食べたい、飲みたい」などの身体的な理由が隠れている場合もあります。少し飲食をすると気持ちが落ち着くことがあります。
どうしても外出を止められない場合は、一緒に付き添って歩くのも一つの方法です。無理に引き止めると怒りや暴力につながることもあります。むしろ、見守りのある安全な外出に変えることが、結果的に本人の自由を認めつつ安全を確保する最良の対策となります。
一緒に歩くことで、よく行く場所や行動パターンを把握でき、今後の対策にも役立ちます。
行方不明時の対応―警察への早期連絡が鍵

もし行方がわからなくなった場合は、すぐに警察に連絡しましょう。
「家族のことなので……」と躊躇する方もいますが、徘徊は早期発見が何よりも重要です。時間が経てば経つほど捜索範囲が広がり、発見が困難になります。早く捜索依頼すれば捜索範囲が狭くなり、かえって迷惑をかけにくいのです。
近隣を捜索する場合は、馴染みのある場所を探しましょう。徘徊者が発見される場所は、自宅から半径5キロ圏内の比較的近い場所であることが多いとされています。昔住んでいた家、以前の職場、よく通った公園など、過去に縁のある場所をリストアップしておくと役立ちます。
地域包括支援センターにも連絡しましょう。「高齢者の見守り・SOSネットワーク」のサービスを提供している場合があり、地域の協力者や団体にすみやかに情報が配信され、早期発見の助けになります。
認知症の徘徊対策―地域連携と社会的支援の活用
徘徊対策は家族だけで抱え込まず、地域や社会の力を借りることが重要です。
地域包括支援センターを起点とした徘徊対策

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。
認知症の診断を受けた段階で、地域包括支援センターに相談しましょう。ケアマネジャーの紹介、介護保険の手続き、地域の見守りネットワークの情報など、様々なサポートを受けられます。
多くの自治体で「徘徊・見守りSOSネットワーク」を整備しています。認知症の方を事前登録しておくと、万が一行方不明になった際に、地域全体で情報を共有し、早期発見を行う仕組みです。
認知症カフェや家族会など、同じ悩みを持つ家族と出会える場所も紹介してもらえます。「一人じゃない」と実感できる、心の支えになるでしょう。
近隣住民や商店との協力体制構築

近隣住民や地域の商店に事情を伝え、協力をお願いしておくことも有効です。
「認知症で徘徊することがあります。もし一人で歩いているのを見かけたら声をかけていただけますか」と、現在の状況を簡単に説明しましょう。地域のコミュニティに理解してもらえると安心です。
コンビニや商店など、よく利用する店に事情を伝え、可能な範囲での協力をお願いします。郵便配達や新聞配達の方も、日常の中でさりげなく見守ってくれる貴重な存在です。
ただし、都市部では住民同士の助け合いが不足している現実もあります。地域連携の構築には、自治体や専門職の支援が不可欠です。
デイサービスや訪問介護で見守り体制強化

介護保険サービスを活用することも、立派な見守り対策です。
認知症デイサービスでは、認知症の専門的ケアが受けられます。日中に外出の機会を持ち、他者との交流や活動に参加することで、日常的な外出欲求が満たされ、徘徊が減少することがあります。
訪問介護(ホームヘルパー)を定期的に利用すれば、自宅での食事や入浴の支援を受けつつ、定期的な見守りにもなります。
薬物療法も選択肢の一つです。抗精神病薬により睡眠のパターンが整って、徘徊の症状が改善することがあります。ただし、副作用やせん妄のリスクもあるため、必ず主治医と相談の上で慎重に検討しましょう。
認知症の徘徊対策は3層の総合アプローチで:まとめ
認知症による徘徊は、年間約1万8,000人が行方不明になる深刻な社会問題です。全行方不明者の約2割を占め、2021年から増加傾向にあります。交通事故、転倒、熱中症、低体温症など命に関わる危険が伴い、早急な対策が必要です。
効果的な徘徊対策は、予防・環境整備・対応の3層アプローチで構成されます。
第一層の予防策では、規則正しい生活リズムの確立、日中の適度な運動、居場所感の創出が基盤です。早寝早起き、三食の食事、散歩やラジオ体操でエネルギーを消耗させ、夜間徘徊を防ぎます。簡単な家事や趣味活動を通じて「ここが自分の居場所だ」という感覚を持てることが重要です。
第二層の環境整備では、人感センサーやチャイム、離床センサーで外出を即座に検知します。最も効果的なのがGPS端末の活用で、靴装着タイプ、キーホルダー型、腕時計型など様々な選択肢があります。日本全国どこにいても居場所を把握でき、早期発見により事故リスクを大幅に軽減できます。
名札や連絡先カード、自治体の見守りシールも併用しましょう。ただし、過度な施錠は虐待とみなされる可能性があり、災害時のリスクもあるため避けるべきです。
第三層の対応では、叱らず傾聴する共感対応が基本です。徘徊は本人にとって目的のある行動であり、否定すると不安が増して症状が悪化します。気をそらす工夫や、一緒に付き添って歩くことで、安全を確保しつつ本人の自由を認められます。
行方不明時はすぐに警察に連絡し、地域包括支援センターや見守りSOSネットワークも活用しましょう。徘徊者の多くは自宅から半径5キロ圏内で発見されるため、馴染みの場所を優先的に捜索します。
地域連携も不可欠です。地域包括支援センターを起点に、近隣住民や商店との協力体制を構築し、デイサービスや訪問介護で見守り体制を強化します。認知症カフェや家族会で同じ悩みを共有することも、心の支えになります。
認知症の徘徊対策に完璧な方法はありません。しかし、予防・環境整備・対応の3層を組み合わせることで、リスクを大幅に減らし、早期発見につなげることができます。本人の尊厳を守りつつ安全を確保する対策を、専門家と一緒に考えていきましょう。
さいごに。介護の悩みが消えないあなたへ
この記事を読んでも、こんな不安は残っていませんか?
実は、多くの介護家族が同じ悩みを抱えています。
そこに足りないのは「今後どのように行動していくべきか」というあなた自身の判断軸です。
このまま何も変えなければ
介護の判断軸がないままでは、
状況が変わるたびに迷い、
そのたびに自分を責め続けることになります。
「もっと早く考えておけばよかった」
そう思う人を、私たちは何人も見てきました。
毎日3分で「介護の判断軸」を育てる無料メルマガを発信しています。

そこでココマモでは、毎日3分で読める「介護の判断軸」となる知識が学べる無料メールマガジンを発信しています。
具体的には、
さらに、登録した方だけが読める
- メルマガ会員限定記事(介護の決断に特化した深堀りコンテンツ)
にもアクセスできます。
介護の決断を、自分でできるようになるために
介護に「正解」はありません。
だからこそ、最後に自分で納得して選べるかどうかが一番大事です。
そのための小さな一歩として、
まずはメルマガで「判断軸」を一緒に育てていきませんか?
下記フォーム入力後、メールボックスに1通目が届きます。
• メールの最後に必ず解除リンクを記載していますので、いつでもワンクリックで停止できます。
• ご入力いただいた情報は プライバシーポリシーに基づき厳重に管理しています。
• ※Yahoo・iCloudメールは届きにくい場合があります。Gmailまたは携帯メールのご利用を推奨しています。





