「夫の介護に疲れて、自分も体調を崩しそう」「80代の両親が二人きりで介護し合っている姿を見るのが辛い」「このままでは共倒れになってしまうのではないか」
65歳以上の高齢者同士が介護し合う老老介護は、現在日本の在宅介護世帯の63.5%に達しており、もはや他人事ではありません。介護する側も高齢であるため、体力的にも精神的にも負担が大きく、一人で抱え込んでしまうと共倒れのリスクが高まります。
この記事では、老老介護を乗り越えるための具体的な解決策を詳しく解説します。地域包括支援センターの活用方法から介護保険サービスの選び方、レスパイトケアの利用まで、あなたの状況に合った支援を見つけるための情報をお届けします。
老老介護とは?現状と増加している背景
老老介護の解決策を知る前に、まず現状を正しく理解しましょう。問題の本質を把握することで、適切な対応策が見えてきます。
老老介護の定義と深刻な現状

老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく65歳以上の高齢者を介護している状態を指します。夫婦間での介護、親子での介護、兄弟姉妹での介護など、関係性はさまざまです。
厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、在宅介護を行う世帯の63.5%が老老介護の状態にあります。さらに、介護者と被介護者がともに75歳以上の「超老老介護」も33.1%に達しており、年々増加傾向にあります。
特に配偶者による介護が全体の25.2%を占め、介護者の65.0%が女性という調査結果も出ています。高齢の妻が同世代の夫を介護するケースが多く、身体的負担が極めて大きいのが実情です。
老老介護が増加している3つの原因

老老介護が増加している背景には、複数の社会的要因が絡み合っています。
平均寿命と健康寿命の差が広がっていることが最大の原因です。2019年時点で、男性は平均寿命81.41歳に対し健康寿命72.68歳で約8.73年の差があり、女性は平均寿命87.45歳に対し健康寿命75.38歳で約12.07年の差があります。
この期間は介護が必要な状態で過ごすことになるため、50代半ばで親の介護を始めた子どもが、介護を続けるうちに65歳を超えて老老介護に突入するケースが増えています。
核家族化の進行も大きな要因です。子ども世帯が親の居住地から離れた場所で暮らすケースが増え、介護が必要になっても近くに頼れる家族がいない状況が生まれています。結果として、高齢者夫婦だけで介護を担わざるを得なくなっています。
「家族が介護すべき」という価値観も老老介護を助長しています。「子どもに迷惑をかけたくない」「身内の世話は身内がすべき」という考えから、他人の協力を拒み、一人で抱え込んでしまう高齢者が少なくありません。
老老介護が引き起こす深刻な問題

老老介護には、若い世代の介護とは異なる特有のリスクが存在します。
介護者自身の体力低下により、入浴介助や排泄介助、移乗介助などで転倒や怪我をするリスクが高まります。介護中に腰を痛めたり、骨折したりすることで、介護者自身が要介護状態になってしまう「共倒れ」のケースも珍しくありません。
精神的な負担も深刻です。24時間体制の介護が必要な場合、「自分一人でやらなければ」というプレッシャーや、睡眠不足、社会的孤立により、介護うつに陥るリスクが非常に高くなります。
さらに、介護者も被介護者も認知症を患っている「認認介護」に発展すると、服薬管理や金銭管理ができなくなり、生活そのものが成り立たなくなる危険性があります。
老老介護の解決策①地域包括支援センターへの相談
老老介護の解決策として、まず最初に活用すべきなのが地域包括支援センターです。多くの方がその存在を知らないまま、一人で悩みを抱えています。
地域包括支援センターとは何か

地域包括支援センターは、地域の高齢者とその家族のための総合相談窓口です。各市区町村に設置が義務付けられており、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されています。
介護、医療、福祉、生活支援など、高齢者に関するあらゆる相談を無料で受け付けています。「こんな些細なことで相談していいのだろうか」と躊躇する必要はありません。日常生活の小さな困りごとから、深刻な介護問題まで、幅広く対応してくれます。
地域によっては「高齢者相談センター」「高齢者総合相談センター」など名称が異なる場合があるため、お住まいの市区町村のホームページで確認するか、役所の介護保険課に問い合わせてみましょう。
地域包括支援センターで受けられる具体的な支援

地域包括支援センターでは、老老介護の状況に応じたさまざまな支援を提供しています。
総合相談支援では、現在抱えている困りごとを専門職に相談できます。「介護がつらくて休みたい」「経済的な理由で介護施設に入れない」といった相談に対し、利用可能な制度や必要なサービスを紹介してくれます。
介護予防ケアマネジメントでは、要支援認定を受けた方や、支援が必要になる可能性の高い方に対し、介護予防を目的とした支援を行います。運動機能向上、栄養改善、認知症予防などのプログラムを提供し、介護状態の悪化を防ぎます。
権利擁護業務では、高齢者虐待の相談や成年後見制度の活用支援も行っています。老老介護で介護者が精神的に追い詰められ、思わず手を上げてしまいそうになった時なども、遠慮せずに相談してください。
また、ケアマネジャーへの支援も行っているため、すでに介護サービスを利用している場合でも、より適切なケアプランの見直しなどの相談ができます。
地域包括支援センター活用の実例

78歳のAさんは、認知症の夫(80歳)を自宅で介護していました。夜間の徘徊や暴言に悩み、睡眠不足と精神的疲労で限界を感じていました。
地域包括支援センターに相談したところ、要介護認定の申請手続きをサポートしてもらい、デイサービスとショートステイの利用を提案されました。週3回のデイサービスと月1回のショートステイを利用することで、Aさんは十分な休息を取れるようになり、介護を続けられるようになりました。
このように、地域包括支援センターは老老介護の解決策を見つける出発点となります。一人で抱え込まず、まずは相談してみることが大切です。
老老介護の解決策②介護保険サービスの活用
介護保険サービスは、老老介護の負担を大幅に軽減できる強力な解決策です。しかし、制度の複雑さから十分に活用できていない方も多いのが現状です。
介護保険サービス利用の基本的な流れ

介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定の申請が必要です。市区町村の介護保険窓口または地域包括支援センターで申請手続きを行います。
申請後、認定調査員が自宅を訪問し、心身の状態を確認します。主治医の意見書と合わせて審査され、要支援1・2または要介護1~5の認定を受けます。認定結果は申請から約30日以内に通知されます。
認定を受けたら、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づいて介護サービスを利用します。自己負担は1割から3割(所得に応じて変動)で、残りは介護保険から給付されます。
老老介護に効果的な介護保険サービス

老老介護の負担軽減に特に効果的なサービスを紹介します。
訪問介護(ホームヘルプ)は、ヘルパーが自宅に訪問し、食事・入浴・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・調理などの生活援助を提供します。体力的に負担の大きい入浴介助だけを依頼するなど、部分的な利用も可能です。
デイサービス(通所介護)は、日中に施設で過ごし、食事・入浴・レクリエーション・機能訓練などを受けられます。介護者は日中の時間を自分のために使え、心身のリフレッシュができます。週3~4回の利用で、かなり負担が軽減されます。
ショートステイ(短期入所生活介護)は、数日から最大30日間、施設に宿泊して介護を受けられます。介護者の冠婚葬祭や旅行、体調不良時などに利用でき、介護から完全に離れる時間を確保できます。
サービス利用の目安
要介護1の場合、月額約16万7,650円分のサービスを1~3割負担で利用可能。要介護3では月額約27万480円分、要介護5では月額36万2,170円分まで利用できます。ケアマネジャーと相談し、限度額内で効果的なサービスを組み合わせましょう。
介護保険サービスを最大限活用するコツ

介護保険サービスを効果的に活用するには、いくつかのポイントがあります。
まず、ケアマネジャーに正直に現状を伝えることが大切です。「こんなことまで頼んでいいのか」と遠慮せず、介護で困っていることや疲れを感じていることを率直に話しましょう。ケアマネジャーは、あなたの状況に応じた最適なプランを作成してくれます。
次に、複数のサービスを組み合わせることで、効果が倍増します。たとえば、平日はデイサービス、週末は訪問介護、月1回はショートステイといった具合に、生活リズムに合わせて調整できます。
また、福祉用具のレンタルや住宅改修も介護保険で利用できます。電動ベッド、車椅子、手すりの設置、段差解消などにより、介護の身体的負担を大幅に減らせます。
【老老介護の判断に迷っていませんか?】
老老介護の解決策③レスパイトケアで休息を確保
レスパイトケアは、老老介護における最も重要な解決策の一つです。介護者が定期的に休息を取ることで、長期的に介護を継続できるようになります。
レスパイトケアの本質的な意味

レスパイト(respite)とは「小休止」「息抜き」「休息」を意味する英語です。レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から離れて休息を取るための支援を指します。
「自分だけ休んで申し訳ない」「介護を放棄していると思われないか」と罪悪感を抱く方もいますが、それは誤った考えです。介護者が心身ともに健康でなければ、質の高い介護を続けることはできません。
むしろ、定期的に休息を取ることで介護者のストレスが軽減され、被介護者に対しても優しく接することができるようになります。レスパイトケアは、介護者と被介護者の両方にとって必要不可欠なのです。
レスパイトケアで利用できるサービス

レスパイトケアには、休息の長さや目的に応じたさまざまなサービスがあります。
短時間の休息(1~2時間)が必要な場合は、訪問介護を利用します。ヘルパーに身体介護や生活援助を任せている間、買い物に出かけたり、友人とお茶をしたり、自分の時間を持つことができます。
日中の休息(6~8時間)には、デイサービスが最適です。朝に送り出してから夕方まで、丸一日を自分のために使えます。趣味の活動、通院、家事の片付けなど、普段できないことに時間を使えます。
数日間の休息が必要な場合は、ショートステイを利用しましょう。旅行に行く、自分の体調を整える、家族の用事に専念するなど、介護から完全に離れる時間を確保できます。
医療的ケアが必要な場合のレスパイト入院もあります。人工呼吸器や経管栄養など、高度な医療管理が必要な方を病院で一時的に受け入れるサービスです。最大1~2週間程度の利用が可能で、医療保険が適用されます。
効果的なレスパイトケア活用法

レスパイトケアを効果的に活用するには、計画的な利用が重要です。
まず、定期的な利用をスケジュールに組み込むことをおすすめします。「疲れたら使おう」ではなく、「毎週水曜日はデイサービス」「月末にはショートステイ」と決めておくことで、確実に休息を確保できます。
次に、事前の施設見学や体験利用を行いましょう。被介護者が安心して過ごせる環境かどうかを確認することで、初めての利用時の不安が軽減されます。複数の施設を比較検討するのも良いでしょう。
また、利用後の振り返りも大切です。サービス担当者から利用中の様子を聞き、被介護者の反応や変化を把握します。次回の利用時に役立つ情報を得られるだけでなく、日常の介護にも活かせます。
人気の施設は予約が取りにくいため、早めの予約を心がけましょう。特に年末年始やゴールデンウィークなどの時期は、数か月前から予約が埋まってしまうこともあります。
老老介護の解決策④家族や地域との連携強化
老老介護を一人で抱え込まず、家族や地域のネットワークを活用することも重要な解決策です。
家族会議で役割分担を明確にする

離れて暮らす家族がいる場合、定期的に家族会議を開き、介護の役割分担や今後の方針を話し合いましょう。
直接介護ができなくても、経済的支援、定期的な見守り、情報収集、手続きの代行など、さまざまな形で協力できます。「誰が何を担当するか」を明確にすることで、主介護者の負担が軽減されます。
また、将来的な施設入所の検討も話し合っておくべきです。「いざという時はどうするか」を事前に決めておくことで、緊急時にスムーズに対応できます。
地域の見守りネットワークを活用する

近隣住民や民生委員、地域のボランティアとのつながりを作ることも、老老介護の解決策として有効です。
多くの自治体では、高齢者見守りサービスを提供しています。定期的な訪問や電話での安否確認、緊急時の通報システムなどがあります。お住まいの地域包括支援センターで利用可能なサービスを確認しましょう。
また、近所の方に「老老介護をしている」ことを伝えておくことで、異変に気づいてもらいやすくなります。連絡先を交換しておけば、緊急時に助けを求めることもできます。
介護者同士の交流で孤立を防ぐ

介護者の会や認知症カフェなど、同じ立場の人との交流の場に参加することもおすすめです。
他の介護者と悩みを共有したり、情報交換したりすることで、精神的な負担が軽減されます。「自分だけではない」と感じられることが、介護を続ける力になります。
地域包括支援センターで、近くの介護者の会や認知症カフェの情報を教えてもらえます。オンラインでの交流会も増えており、外出が難しい方でも参加できます。
老老介護の解決策⑤施設入所という選択肢
在宅での老老介護が限界に達した場合、施設入所も重要な解決策の一つです。「施設に入れるのは可哀想」という考えは誤解です。
施設入所を検討すべきタイミング

以下のような状況になった場合、施設入所を真剣に検討すべきです。
施設入所を検討すべきサイン
介護者自身が体調を崩し、医療機関を受診している。介護うつの症状(意欲低下、不眠、食欲不振)が出ている。24時間体制の介護が必要で、睡眠時間が確保できない。介護サービスを最大限利用しても負担が軽減されない。認認介護になり、生活管理ができなくなっている。
これらは「もう限界」のサインです。我慢を続けると、介護者と被介護者の両方が危険な状態に陥ります。
老老介護に適した施設の種類

老人ホームにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の方が対象の公的施設です。費用が比較的安価ですが、入居待ちが長い場合があります。終身利用が可能で、看取りまで対応してくれます。
介護老人保健施設(老健)は、医療ケアとリハビリに重点を置いた施設です。在宅復帰を目指す方向けですが、長期的な利用も可能な場合があります。
有料老人ホームは、民間企業が運営する施設で、サービス内容や設備が充実しています。費用は高めですが、入居しやすく、要介護度に応じたケアが受けられます。
グループホームは、認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。家庭的な雰囲気で、認知症ケアに特化しています。
施設選びのポイントと罪悪感の解消

施設を選ぶ際は、必ず複数の施設を見学しましょう。スタッフの対応、入居者の表情、施設の雰囲気、清潔さなどを確認します。
また、家からの距離も重要です。頻繁に面会に行ける距離にある施設を選ぶことで、被介護者も安心でき、家族も関わり続けることができます。
「施設に入れるのは親不孝」と感じる必要はありません。プロのケアを受けることで、被介護者の生活の質が向上することも多いのです。介護者が健康を取り戻し、笑顔で面会に行けるようになることが、被介護者にとっても幸せなのです。
老老介護の解決策で最も大切なこと
老老介護の解決策として、さまざまな方法をご紹介してきました。最後に、すべての解決策に共通する最も大切なことをお伝えします。
「助けを求める勇気」が共倒れを防ぐ

老老介護において最も重要なのは、一人で抱え込まず、助けを求めることです。
「家族の世話は自分がすべき」「他人に頼るのは恥ずかしい」という考えが、共倒れのリスクを高めます。しかし、介護は一人でできるものではありません。専門家の力を借り、公的サービスを活用することは、決して恥ずかしいことではないのです。
むしろ、適切なタイミングで助けを求めることが、介護を長く続けるための賢い選択です。地域包括支援センターへの相談、介護保険サービスの利用、レスパイトケアの活用―これらはすべて、あなたと大切な家族を守るための手段なのです。
早めの相談が選択肢を広げる

老老介護の問題は、早期に相談するほど選択肢が多くなります。
「まだ大丈夫」と我慢を重ねているうちに、介護者の健康が悪化し、選択肢が限られてしまうケースが少なくありません。「ちょっと疲れてきたな」と感じた段階で、地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
専門家は、あなたの状況に応じた最適な解決策を提案してくれます。すぐにサービスを利用しなくても、「いざという時はこういう方法がある」と知っているだけで、精神的な余裕が生まれます。
専門相談で不安を解消し、最適な解決策を見つける

老老介護の解決策は、個々の状況によって異なります。介護度、経済状況、家族関係、地域の資源など、さまざまな要素を考慮して最適な方法を選ぶ必要があります。
「どのサービスを選べばいいかわからない」「費用負担が心配」「家族との意見が合わない」といった悩みは、専門的な知識と経験を持つ相談員のアドバイスが非常に有効です。
一人で悩まず、専門家のサポートを受けることで、より安心できる選択ができるでしょう。
老老介護の解決策を実践する:まとめ
老老介護は、日本の在宅介護世帯の63.5%に達する深刻な社会問題ですが、適切な解決策を実践することで共倒れを防ぐことができます。
最も重要なのは、地域包括支援センターへの早期相談です。専門職が無料で総合的な支援を提供してくれるため、まずはここに連絡しましょう。
次に、介護保険サービスの積極的な活用が欠かせません。訪問介護、デイサービス、ショートステイを組み合わせることで、介護者の負担を大幅に軽減できます。
レスパイトケアによる定期的な休息確保も必須です。「自分だけ休んで申し訳ない」という罪悪感を捨て、計画的に休息を取ることが長期的な介護継続につながります。
さらに、家族や地域との連携を強化し、孤立を防ぐことも大切です。同じ立場の介護者との交流も、精神的な支えになります。
限界を感じたら、施設入所も前向きな選択肢として検討しましょう。プロのケアを受けることで、被介護者の生活の質が向上し、介護者も健康を取り戻せます。
老老介護は決して一人で乗り越えられるものではありません。しかし、適切な支援を受けることで、介護者も被介護者も笑顔で過ごせる日々を取り戻すことができます。あなたの勇気ある一歩が、より良い未来への扉を開くのです。
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