認知症で同じ事を何度も言うのはなぜ?しつこいと感じる時の対処法

介護方法と支援

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「さっきも同じ話をしたばかりなのに、また同じことを言い出した」

「何度答えても、5分後にはまた同じ質問をされる。もう限界…」

認知症の家族を介護している方の多くが、この「同じ事を何度も言う」「しつこく繰り返す」症状に悩まされています。朝から晩まで同じ話や質問を繰り返されると、どんなに優しい家族でもイライラしてしまうでしょう。そして「イライラしてしまう自分はひどい人間だ」と自分を責めてしまうのです。

この記事では、認知症で同じ事を何度も言う症状の医学的メカニズムと、家族が疲弊せずに対応するための具体的な方法を詳しく解説します。なぜ本人は繰り返していると気づかないのか、「しつこい」と感じてしまう家族の心理、そして悪循環を断ち切る実践的な対処法をお届けします。

認知症で同じ事をしつこく何度も言う症状の正体

認知症の方が示す「同じ事を何度も言う」症状は、医学的には「反復言語(perseveration)」と呼ばれます。これは単なる物忘れとは根本的に異なる、認知症特有の症状なのです。

反復言語の3つの典型的パターン

反復言語には、いくつかの典型的なパターンがあります。最も多いのが同じ質問を何度も繰り返すタイプです。「今日は何日?」「ご飯はまだ?」「財布はどこ?」といった質問を、わずか数分のうちに何度も尋ねます。

次に多いのが同じ話を繰り返すパターンです。昔の思い出話や最近の出来事について、まるで初めて話すかのように何度も同じ内容を語ります。話している本人は、つい先ほど同じ話をしたことを全く覚えていないのです。

さらに同じ言葉や動作を繰り返すケースもあります。「あれ、あれ」と同じ言葉ばかり発したり、オウム返しのように相手の言葉をそのまま繰り返したりする症状です。

反復言語の主なパターン
同じ質問の繰り返し:「今何時?」を5分おきに聞く
同じ話の繰り返し:昨日話した内容を今日も話す
同じ言葉の固着:「あれ」「それ」ばかり言う
オウム返し:相手の言葉をそのまま繰り返す

通常の物忘れとは決定的に違う点

加齢による通常の物忘れと、認知症の反復言語には明確な違いがあります。健康な高齢者でも同じ話を繰り返すことはありますが、「前にも話したね」と指摘されれば「そうだった」と気づけるのです。

一方、認知症の反復言語では本人は繰り返していること自体を認識できません。指摘されても理解できず、時には「そんなこと言っていない」と怒り出すこともあります。これは単なる記憶の問題だけでなく、脳の情報処理機能全体が低下しているためです。

また、通常の物忘れは出来事の一部を忘れるのに対し、認知症では出来事そのものを忘れます。「昼ご飯に何を食べたか忘れた」が物忘れなら、「昼ご飯を食べたこと自体を忘れた」が認知症の記憶障害なのです。

物忘れと記憶障害の決定的な違い
通常の物忘れ:指摘されれば気づく、ヒントで思い出せる、日常生活は自立できる
認知症の記憶障害:指摘されても気づかない、ヒントでも思い出せない、生活に支障が出る

家族が「しつこい」と感じてしまう心理

家族が「しつこい」と感じてしまうのは、当然の反応です。同じ質問に何度も答え、同じ話を何度も聞かされることは、想像以上に精神的な負担となります。そして多くの介護者が、そう感じてしまう自分を責めてしまうのです。

特に困難なのは終わりが見えないという点です。一度答えても、数分後にまた同じ質問が来る。この繰り返しがいつまで続くのか分からない不安が、イライラを増幅させます。

また、本人が繰り返していることに全く気づいていないため、家族は「わざとやっているのではないか」「私を困らせようとしているのではないか」と感じてしまうこともあります。実際には本人に悪意は全くないと頭では理解していても、感情的にはつらいものです。

さらに周囲の人には理解されにくいという孤独感もあります。「親の話を聞くくらい」と軽く言われることで、介護者の苦しみが深まることも少なくありません。この孤立感が、「しつこい」という感情をより強めてしまうのです。

認知症の人は同じ事を何度も言う脳のメカニズムを理解する

認知症で同じ事を何度も言う症状には、脳の複数の領域が関わっています。医学的メカニズムを理解することで、適切な対応法が見えてきます。

記憶障害による繰り返しのメカニズム

反復言語の最も基本的な原因は短期記憶の障害です。アルツハイマー型認知症では、海馬という記憶を司る脳の部位が萎縮し、新しい情報を記憶に定着させることができなくなります。

つまり、本人は「さっき質問した」「先ほど話した」という事実そのものを記憶できていないのです。毎回が初めての質問、初めての話だと感じているため、何度も繰り返してしまいます。これは本人の意思とは無関係に起こる、脳の機能障害による症状なのです。

また記憶の更新ができないことも問題です。例えば「財布はどこ?」と聞いて「引き出しの中」と答えられても、その答え自体を記憶できません。だから数分後にまた同じ質問をするのです。

さらに、記憶には覚える(記銘)、保存する(保持)、思い出す(想起)という3つの段階がありますが、認知症ではこの全ての段階で障害が起きています。情報を脳に入力することも、保存することも、引き出すこともできない状態なのです。

記憶障害の3段階
記銘障害:新しい情報を覚えられない
保持障害:覚えた情報を保存できない
想起障害:必要な時に思い出せない
認知症ではこれら全てが障害されているため、何度も同じことを繰り返してしまいます。

保続という思考の固着現象

反復言語のもう一つの重要な原因が「保続(ほぞく)」という現象です。これは前頭葉の機能低下により、思考や行動を切り替えることができなくなる状態を指します。

健康な脳では、状況に応じて話題を切り替えたり、新しい情報に注意を向けたりできます。しかし前頭葉が障害されると、一度始めた言葉や行動から抜け出せなくなるのです。これはまるで、レコードの針が同じ溝にはまって同じ音を繰り返すような状態といえます。

例えば「今年で何歳になりましたか?」と聞かれて「80歳」と答えた後、別の質問をされても「80歳」と答え続けてしまいます。前の質問への答えに思考が固着し、切り替えができないのです。

この保続現象は前頭側頭型認知症で特に顕著に見られますが、アルツハイマー型認知症でも進行とともに現れます。同じ質問を繰り返す、同じ言葉を連発する、同じ動作を繰り返すといった症状として現れるのです。

見当識障害と不安の心理メカニズム

認知症の方は、常に強い不安を抱えています。自分の記憶があいまいで、周囲の状況が理解できないため「確認したい」という欲求が非常に強くなるのです。

見当識障害により、時間や場所、状況を正しく認識できなくなると、「今日は何日?」「ここはどこ?」「これから何をするの?」といった基本的なことさえ分からなくなります。この混乱と不安が、繰り返しの質問となって現れます。

「ご飯はまだ?」という質問を繰り返すのは、単に食事をしたことを忘れているだけではありません。「何か大事なことを忘れているのではないか」「自分は今どういう状況にいるのか」という不安を解消するための確認行動なのです。

一度答えを聞いても記憶できないため、不安が解消されません。だからまた確認したくなる。この悪循環が、しつこく同じことを繰り返す症状を生み出しているのです。

なぜ不安が繰り返しを生むのか
記憶があいまいで不安になる → 確認のために質問する → 答えを記憶できない → すぐに不安が戻る → また確認したくなる。この循環が、しつこい繰り返しを生み出します。

【同じ質問の繰り返しに心が折れそうになっていませんか?】

「何度答えても、また同じことを聞いてくる…いつまで続くの?」
「イライラしてしまう自分に罪悪感を感じる」

繰り返しの質問に対応し続けるのは、想像以上に消耗します。でも適切な知識と対処法を知ることで、負担は大きく軽減できます。
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認知症のタイプ別に見る同じ事を繰り返す特徴

認知症のタイプによって、同じ事を何度も言う症状の現れ方が異なります。タイプごとの特徴を理解することで、より効果的な対応が可能になります。

アルツハイマー型認知症の場合

アルツハイマー型認知症では同じ質問や同じ話の繰り返しが最も典型的な症状です。海馬の萎縮により、新しい記憶を形成できないことが主な原因となります。

「財布はどこ?」「今日は何日?」「ご飯はまだ?」といった日常的な質問を、短時間のうちに何度も繰り返します。家族が丁寧に答えても、その答えを記憶に留めることができないため、すぐにまた同じ質問をしてしまうのです。

また、昔の思い出話を繰り返すのも特徴的です。長期記憶は比較的保たれているため、若い頃の出来事や子育ての思い出などを、何度も同じように語ります。本人にとっては毎回新鮮な話題なのです。

前頭側頭型認知症の場合

前頭側頭型認知症では保続による繰り返しが顕著です。同じ質問を機械的に繰り返したり、質問を質問で返したりする特徴的なパターンが見られます。

「どうされますか?」「これはどうしますか?」といった同じ形式の質問を、状況に関係なく繰り返します。また、会話の流れを無視して、自分の関心のある話題ばかりを一方的に話し続けることもあります。

同じ時間に同じ行動を繰り返す「時刻表的行動」も特徴的で、毎日決まった時間に同じことを言ったり、同じ場所に行こうとしたりします。この常同行動と言語の繰り返しが組み合わさると、非常に強固なパターンとなります。

レビー小体型認知症の場合

レビー小体型認知症ではオウム返しのような反復が特徴的です。相手の言葉をそのまま繰り返したり、質問に対して質問をそのまま返したりします。

例えば「お茶を飲みますか?」と聞くと「お茶を飲みますか?」と返ってくる。これは言葉の意味を理解して応答するプロセスが障害されているためです。

また、幻視の影響で同じ訴えを繰り返すこともあります。「知らない人がいる」「虫がいる」といった幻視に基づく発言を、繰り返し訴えるのです。

認知症タイプ別の反復言語の特徴
アルツハイマー型:同じ質問・同じ話を繰り返す(記憶障害が主因)
前頭側頭型:同じ質問を機械的に繰り返す(保続が主因)
レビー小体型:オウム返しをする(言語処理障害が主因)
血管性:「あれ」「それ」など代名詞を繰り返す(言葉が出にくい)

認知症で同じ事を何度も言い、しつこいと感じた時の効果的な対応法

同じ事を何度も言われて「しつこい」と感じた時、どう対応すれば良いのでしょうか。ここでは家族の負担を軽減しながら、本人の不安も和らげる具体的な方法を紹介します。

否定せず受け止める基本姿勢

最も重要なのは否定しないことです。「さっきも聞いたでしょ!」「何度も同じこと言わないで!」という言葉は、本人の不安をさらに強めてしまいます。

本人は同じことを繰り返している自覚がありません。否定されることで「自分の話を聞いてもらえない」「理解してもらえない」と感じ、余計に何度も同じことを言うようになります。これは悪循環を生む最悪のパターンです。

代わりに、初めて聞くかのように穏やかに答えることが理想です。難しい場合でも、せめて否定的な言葉を避け、「そうですね」と受け止める姿勢を見せましょう。

ただし、これを完璧に実践する必要はありません。家族も人間ですから、疲れている時やストレスが溜まっている時は、穏やかに対応できないこともあるでしょう。それは当然のことであり、自分を責める必要はないのです。

避けるべきNG対応
「さっきも言ったでしょ!」と強く否定する
「また同じ話?」とうんざりした態度を見せる
無視する、返事をしない
「認知症だから忘れるんでしょ」と病気を指摘する

不安を軽減する環境づくり

同じことを繰り返す根本原因の一つが不安です。不安を軽減する環境を整えることで、繰り返しの頻度を減らすことができます。

視覚的な情報提供が効果的です。大きなカレンダーや時計を見やすい場所に設置する、予定を紙に書いて貼っておく、といった工夫で「今日は何日?」という質問が減ることがあります。

「財布はどこ?」と繰り返し聞かれる場合は、財布を置く場所を決めて、そこに「財布はここ」と貼り紙をしておくのも有効です。本人が自分で確認できる仕組みを作ることで、質問の回数が減ります。

また生活リズムを整えることも重要です。食事や入浴、就寝の時間を一定にすることで、「ご飯はまだ?」という不安が軽減されます。規則正しい生活パターンは、見当識障害による混乱を減らす効果があるのです。

環境づくりのポイント
大きなカレンダーや時計を見やすい場所に設置
予定や重要な情報を紙に書いて貼る
物の定位置を決めて「○○はここ」と表示
規則正しい生活リズムを維持する

話題を自然に切り替える技術

同じ話を繰り返されたら自然に話題を変える技術も役立ちます。「そういえば、お孫さんは元気?」「今日は天気が良いですね」など、別の話題に誘導するのです。

ただし、唐突に話題を変えると混乱させてしまうため、一度受け止めてから転換することが大切です。「そうでしたね。ところで…」という流れを作りましょう。

また、本人が関心を持っている話題に誘導すると効果的です。好きな食べ物、思い出の場所、趣味だったことなど、ポジティブな感情と結びついた話題は、繰り返しのパターンから抜け出すきっかけになります。

身体を動かすことも有効です。「ちょっと散歩しませんか」「一緒にお茶を入れましょう」と行動を促すことで、思考のループから抜け出せることがあります。

家族自身のストレス管理法

どんなに適切な対応法を知っていても、家族のストレスが限界に達していては実践できません。家族自身のケアが何より重要なのです。

まず、「イライラしてしまう自分」を責めないでください。同じことを何度も繰り返されてイライラするのは、人間として自然な反応です。そう感じてしまう自分を否定する必要はありません。

一人で抱え込まず話せる相手を持つことも大切です。同じ経験をしている介護者の会や、地域包括支援センターでの相談など、自分の気持ちを吐き出せる場所を確保しましょう。

また、定期的に介護から離れる時間を作ることも必要です。デイサービスやショートステイを利用して、完全に介護から離れる時間を持つことで、心の余裕が生まれます。

家族のストレス管理のポイント
イライラする自分を責めない
話せる相手・場所を持つ
定期的に介護から離れる時間を作る
完璧を目指さず、できる範囲で対応する
自分の健康を最優先にする

医療・専門家の力を借りる重要性

同じ事を何度も言う症状が日常生活に大きな支障をきたしている場合、医療や専門家の力を借りることも重要です。一人で抱え込まず、適切な支援を受けましょう。

薬物療法による症状軽減

認知症の進行を遅らせる薬や、不安を軽減する薬により、繰り返しの症状が改善することがあります。特にコリンエステラーゼ阻害薬は、記憶障害の進行を遅らせる効果が期待できます。

また、不安が強い場合は抗不安薬の使用も検討されます。ただし、薬には副作用もあるため、医師とよく相談して判断することが大切です。

薬物療法だけでなく、認知症の進行度合いや生活環境全体を医師に相談することで、総合的なアドバイスを得られます。定期的な受診を通じて、症状の変化を共有しましょう。

地域の支援サービスを活用する

地域包括支援センターでは、認知症介護に関する相談を受け付けています。同じことを繰り返されて困っているという悩みも、専門の相談員が聞いてくれます。

デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用することで、家族の負担を軽減できます。専門スタッフによるケアを受けることで、本人の症状が落ち着くこともあるのです。

また、認知症カフェや家族会など、同じ経験をしている人たちと交流できる場も有効です。「自分だけではない」という安心感が、介護を続ける力になります。

活用できる支援・サービス
地域包括支援センター:総合的な相談窓口
認知症専門医:診断と薬物療法
デイサービス:日中の預かりとケア
ショートステイ:短期間の宿泊預かり
認知症カフェ:情報交換と交流の場
家族会:同じ立場の人との支え合い

同じ事を何度も言う認知症の症状と向き合う:まとめ

認知症で同じ事を何度も言う症状は、記憶障害、保続、見当識障害、不安という複数の要因が複雑に絡み合って生じています。本人は繰り返していることに全く気づいておらず、毎回が初めての質問、初めての話なのです。

家族が「しつこい」と感じてしまうのは当然の反応であり、自分を責める必要はありません。むしろ、そう感じてしまう自分の気持ちを認め、適切にケアすることが重要です。

効果的な対応法としては、否定せず受け止める、不安を軽減する環境を整える、自然に話題を切り替える、といった方法があります。しかし、これらを完璧に実践する必要はなく、できる範囲で取り入れることが大切です。

何より重要なのは家族自身の心と体の健康です。一人で抱え込まず、医療機関や地域の支援サービス、同じ立場の人たちとつながることで、持続可能な介護が実現します。

同じ事を何度も言われてイライラしてしまう。それは人間として自然な感情です。その感情を抱く自分を否定せず、適切な知識と支援を得ながら、無理のない介護を続けていきましょう。

「もう限界」と感じたら、それは助けを求めるサインです。地域包括支援センターやケアマネジャー、かかりつけ医に相談してください。専門家の力を借りることは、決して弱さではなく、賢明な判断なのです。

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