「親が認知症と診断されたけれど、運転免許はどうなるの?」「まだ軽度だから運転を続けられるのでは?」「免許が取り消されたら、もう二度と運転できないの?」
認知症の診断を受けた際、運転免許の取り扱いについて多くの疑問や不安を抱える方は少なくありません。実際に、認知症と診断されたら基本的に運転免許は取り消しとなりますが、その詳細な手続きや例外規定については十分に理解されていないのが現状です。
この記事では、認知症と診断されたら運転免許がどのような扱いになるのか、法的根拠から具体的な手続き、例外規定、そして回復時の再取得方法まで詳しく解説します。ご本人とご家族が適切な対応を取れるよう、正確な情報をお伝えします。
認知症と診断されたら運転免許は取り消しとなる法的根拠
認知症と診断された場合の運転免許の取り扱いは、道路交通法によって明確に規定されています。まず、この法的根拠と実際の運用について詳しく見ていきましょう。
道路交通法による認知症の定義と適用基準

道路交通法第90条では、認知症を「脳の器質的変化により日常生活に支障がある程度まで記憶や認知機能が低下した状態」と定義しています。この定義に該当すると判断された場合、運転免許の取り消しまたは停止処分が行われます。
具体的には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの診断を受けた場合が対象となります。これらは「一定の病気等」として道路交通法施行令で明確に規定されています。
重要なのは、認知症の「程度」よりも「診断の有無」が判断基準となることです。軽度認知障害(MCI)の段階では対象外ですが、医師が認知症と診断した時点で法的な手続きが必要となります。
公安委員会への診断書提出と審査プロセス

認知症と診断された場合、医師の診断書が公安委員会に提出され、厳密な審査プロセスを経て免許の取り扱いが決定されます。このプロセスは複数段階に分かれています。
まず、医師による診断書の作成が行われます。この診断書には、認知症の種類、症状の程度、日常生活への影響、回復の見込みなどが詳細に記載されます。診断書は専用の様式に従って作成され、正確性が重視されます。
次に、公安委員会での審査が実施されます。提出された診断書をもとに、警察署の担当者や交通安全課の専門職員が審査を行い、運転に支障があるかどうかを判断します。
必要に応じて、適性検査や面接が実施される場合もあります。本人の認知機能や判断能力を直接確認し、運転能力への影響を総合的に評価します。
免許取り消しまでの具体的な流れと期間

認知症の診断から免許取り消しまでの具体的な流れは、以下のようなステップで進行します。
第1段階として、医師による認知症の診断と診断書の作成が行われます。この際、医師は本人や家族に対して、運転免許への影響について説明する義務があります。
第2段階では、診断書の公安委員会への提出が行われます。提出は本人、家族、または医師が行うことができますが、法的には提出義務があるため、必ず行わなければなりません。
第3段階として、公安委員会による審査と決定が下されます。審査結果に基づき、免許の取り消し、停止、または経過観察の決定が通知されます。
最終段階では、取り消し決定の場合は免許証の返納手続きが行われ、正式に運転資格を失います。この時点で、法的に運転が禁止されます。
期間の目安
・診断書作成:1~2週間
・診断書提出から審査:2~4週間
・審査結果通知:1週間
・免許証返納手続き:通知後即日
合計:約1~2ヶ月程度
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認知症診断後の運転免許の種類別対応と例外規定
認知症と一言で言っても、その種類や状況によって運転免許の取り扱いには違いがあります。また、一定の条件下では例外的な対応が取られる場合もあります。
認知症の種類による取り扱いの違い

認知症の種類によって、運転免許の取り扱いに違いがあることは重要なポイントです。すべての認知症が同じ扱いを受けるわけではなく、原因疾患や回復の可能性によって対応が分かれます。
アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの変性疾患による認知症は、基本的に進行性であるため、原則として免許取り消しの対象となります。
一方、可逆性の認知症様症状を呈する疾患については、異なる対応が取られます。甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などが原因の場合、適切な治療により回復が期待できるため、一時的な免許停止にとどまる場合があります。
薬剤性の認知症症状についても、原因薬剤の中止により改善が見込まれる場合は、経過観察や一時停止の措置が取られることがあります。
一時停止と取り消し猶予が適用されるケース

認知症と診断されても、一定の条件下では一時停止や取り消し猶予の措置が適用される場合があります。これらの例外規定について詳しく解説します。
一時停止が適用されるのは、6ヶ月以内に回復の見込みがある場合です。この判断は主治医の医学的見解に基づいて行われ、具体的な治療計画と回復の根拠が必要となります。
取り消し猶予が適用されるケースには、軽度の認知症で日常生活への影響が限定的な場合、認知機能の低下が一時的で改善が期待される場合、他の疾患の治療により認知症状の改善が見込まれる場合などがあります。
また、地域の事情や本人の生活状況も考慮される場合があります。公共交通機関がない地域で、通院や生活に深刻な支障をきたす場合は、より慎重な検討が行われることがあります。
75歳以上の認知機能検査との関係性

75歳以上の方の免許更新時に行われる認知機能検査と、認知症診断による免許取り扱いには密接な関係があります。これらの制度がどのように連携しているかを理解することが重要です。
認知機能検査で「認知症のおそれあり」と判定された場合、専門医による診断書の提出が義務となります。この診断書で認知症と診断されれば、前述の取り消し手続きが開始されます。
重要なのは、認知機能検査はスクリーニング(ふるい分け)であり、確定診断ではないことです。検査で問題が指摘されても、専門医の診断で認知症ではないと判断されれば、免許は継続されます。
また、75歳以下でも認知症と診断された場合は、年齢に関係なく免許の取り扱いが検討されます。認知症診断による措置は年齢制限がありません。
臨時認知機能検査制度により、75歳以上で一定の違反行為があった場合は、更新時期以外でも認知機能検査を受ける必要があります。この結果次第では、認知症診断につながる可能性もあります。
認知症からの回復時における運転免許の再取得方法
認知症により免許が取り消された場合でも、症状の改善により運転免許を再取得できる可能性があります。この再取得のプロセスと条件について詳しく解説します。
医師による回復診断と再取得の条件

認知症からの回復による免許再取得には、医師による明確な回復診断が必要です。この診断は取り消し時よりもさらに厳格な基準で行われます。
回復診断の条件として、認知機能テストでの正常値復帰、日常生活動作の完全な回復、運転に必要な判断力と反応速度の回復、安全な運転を行う能力の確認などが求められます。
診断を行う医師は、認知症専門医であることが推奨されており、複数回の診察と詳細な検査結果に基づいて判断します。一度の診察だけで回復診断が下されることはありません。
特に重要なのは、運転に特化した能力評価です。単に認知症状が改善しただけでなく、複雑な交通状況に対応できる判断力、瞬時の反応能力、危険予測能力などが総合的に評価されます。
免許再取得の手続きと必要書類

認知症からの回復による免許再取得の手続きは、通常の免許取得とは異なる特別なプロセスを経ます。
まず、医師による回復診断書の作成が必要です。この診断書は専用の様式を使用し、回復の根拠となる検査結果や観察記録を詳細に記載します。
次に、公安委員会への再取得申請を行います。申請時には、回復診断書、申請書、本人確認書類、手数料などが必要となります。
公安委員会による審査では、提出された診断書の内容確認、必要に応じて追加の適性検査、面接による本人の状態確認などが行われます。
審査に合格した場合、技能試験と学科試験の受験が必要となります。認知症による取り消しからの再取得では、試験免除はありません。
必要書類一覧
・医師による回復診断書(専用様式)
・運転免許再取得申請書
・住民票または本人確認書類
・適性検査手数料
・技能・学科試験手数料
・免許証交付手数料
自主返納後の免許再取得との違い

認知症による取り消しからの再取得と、自主返納後の再取得では、手続きや要件に大きな違いがあります。これらの違いを理解しておくことが重要です。
自主返納の場合、返納から3年以内であれば学科試験と技能試験の一部免除が受けられます。しかし、認知症による取り消しからの再取得では、このような免除措置はありません。
医師の診断書についても、自主返納後の再取得では通常の適性検査で十分ですが、認知症からの回復では専門的な回復診断書が必須となります。
審査の厳格さも大きく異なります。自主返納後の再取得は比較的簡易な手続きですが、認知症からの回復による再取得は極めて厳格な審査が行われます。
また、再取得後の経過観察についても違いがあります。認知症からの回復による再取得の場合、一定期間は定期的な報告や検査が求められる場合があります。
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認知症と診断されたら運転免許の問題は複雑になりがちです。家族だけで悩まず、医師や専門機関に相談しながら、適切な手続きを進めることが大切ですね。
認知症と診断されたら運転免許について知っておくべき:まとめ
認知症と診断されたら運転免許は原則として取り消しとなりますが、その詳細な制度や手続きには多くの重要なポイントがあります。
法的には、道路交通法により認知症は免許取り消しの対象疾患として明確に規定されており、診断書の公安委員会への提出は義務となっています。診断から取り消しまでには1~2ヶ月程度の審査期間があり、この間の運転は法的なリスクを伴います。
一方で、認知症の種類や回復可能性によっては例外的な対応もあります。可逆性の認知症症状や軽度の場合は、一時停止や経過観察となる場合もあり、画一的な対応ではないことも重要な理解ポイントです。
75歳以上の認知機能検査制度とも密接に関連しており、検査結果によって専門医の診断が必要となる仕組みが整備されています。
症状の改善により免許再取得の可能性もありますが、これは極めて厳格な審査を経る必要があり、医師による詳細な回復診断が不可欠となります。
最も大切なのは、本人と家族の安全、そして社会全体の安全を第一に考えることです。認知症の診断は決して恥ずかしいことではなく、適切な医療と社会的支援を受けながら、安全で質の高い生活を続けるための重要な第一歩です。
運転免許の問題で困った際は、地域包括支援センターや医療機関、運転免許センターなどの専門機関を積極的に活用し、適切なサポートを受けながら対応していくことをおすすめします。
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