「介護保険の負担限度額認定を申請したいけど、預貯金を隠していることがばれるの?」「知恵袋で見たけど、役所が銀行口座を調査するって本当?」「正直に申告しなくても大丈夫なの?」
介護保険の負担限度額認定制度について、インターネット上では様々な憶測や不安の声が見られます。特に預貯金の申告に関して、「隠していてもばれないのでは?」という疑問を持つ方も少なくありません。
この記事では、介護保険負担限度額認定制度における預貯金調査の実態について、正確な情報をお伝えします。制度の仕組みから調査体制、よくある誤解まで、専門家の視点で詳しく解説いたします。
介護保険負担限度額認定とは。制度の基本知識
まず、介護保険負担限度額認定制度について、基本的な仕組みを理解しましょう。この制度は、所得や資産が一定額以下の方について、ショートステイや特別養護老人ホームなどの施設利用時の食費・居住費を軽減するものです。
負担限度額認定制度の仕組み

介護保険負担限度額認定制度は、経済的な理由で施設サービスの利用が困難になることを防ぐための支援制度です。通常、施設を利用する際には介護サービス費に加えて、食費と居住費(滞在費)を自己負担する必要があります。
しかし、この制度により認定を受けると、食費と居住費の自己負担額に上限が設定され、超過分は介護保険から給付されます。これにより、月額数万円の負担軽減効果が期待できます。
認定は所得段階によって第1段階から第3段階に分かれており、それぞれ異なる負担限度額が設定されています。所得が低いほど負担限度額も低く設定され、より多くの軽減を受けることができます。
負担限度額認定の段階区分
【第1段階】
・生活保護受給者
・老齢福祉年金受給者(世帯全員が市町村民税非課税)
【第2段階】
・世帯全員が市町村民税非課税
・本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円以下
【第3段階】
・世帯全員が市町村民税非課税
・本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円超120万円以下
対象となるサービスと軽減内容

負担限度額認定制度が適用されるサービスは、主に宿泊を伴う介護サービスです。具体的には、短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院での利用が対象となります。
軽減される費用は、食費(1日あたりの食材料費相当額)と居住費(滞在費)です。通常、食費は1日約1,400円、多床室の居住費は1日約370円程度が標準負担額として設定されていますが、認定を受けると大幅に軽減されます。
例えば、第1段階の認定を受けた場合、食費は1日300円、多床室の居住費は1日0円(無料)となります。これは月30日利用した場合、通常約53,000円の負担が約9,000円まで軽減されることを意味します。
申請に必要な書類と預貯金確認

負担限度額認定の申請には、複数の書類提出が必要です。最も重要なのが、本人と配偶者の預貯金等を証明する書類です。
預貯金等の確認が必要な理由は、所得が低くても多額の資産を保有している場合、真に支援が必要な方への公平性を保つためです。制度改正により、預貯金等の基準額が設定され、これを超える場合は認定対象外となります。
預貯金等の基準額は、第2段階で単身650万円(夫婦1,650万円)、第3段階で単身550万円(夫婦1,550万円)となっています。この金額を超える預貯金等がある場合は、市町村民税非課税であっても認定を受けることができません。
なお、預貯金等には含まれないものもあります。日常生活に必要な家財道具、居住用不動産、自動車などは対象外です。また、負債がある場合は預貯金等から差し引いて計算されます。
預貯金調査の実態。「ばれる」は本当なのか
インターネット上でよく見かける「預貯金を隠していてもばれないのでは?」という疑問について、実際の調査体制と制度の実態を詳しく解説します。
自己申告制度の実際

負担限度額認定における預貯金の申告は、基本的に自己申告制度となっています。申請者が自ら保有する預貯金等の情報を申告し、それを証明する書類を提出するという仕組みです。
この点について、「自己申告なら隠せるのでは?」と考える方もいるかもしれません。確かに申請時点では、申請者が提出した書類に基づいて審査が行われるのが通常です。
しかし、自己申告制度だからといって、不正な申告が見逃されるわけではありません。制度には様々なチェック機能が組み込まれており、虚偽申告のリスクは決して低くありません。
また、申告は一度だけではありません。認定の更新時(原則1年ごと)には改めて預貯金等の状況を申告する必要があり、継続的な確認が行われます。
不正受給防止のチェック体制

多くの方が気になる「役所は預貯金を調査できるのか?」という点についてお答えします。実際のところ、行政機関には一定の調査権限が認められています。
介護保険法第203条では、市町村が必要に応じて金融機関等に対して資料の提供を求めることができると規定されています。これは「官公署等に対する照会権」と呼ばれ、不正受給の疑いがある場合などに行使されることがあります。
また、税務署との情報連携により、申告されていない金融資産が発見される場合もあります。マイナンバー制度の導入により、こうした連携はより効率的に行われるようになっています。
行政機関の調査権限と手段
・金融機関への照会権(介護保険法第203条)
・税務署との情報連携
・マイナンバーによる情報照合
・関係機関からの通報や情報提供
・定期的な抽出調査
・更新時の継続的なチェック
実際に、預貯金等の申告漏れや虚偽申告が発覚し、認定が取り消されるケースは毎年一定数報告されています。発覚した場合のペナルティは重く、過去に遡って給付費を返還しなければならないこともあります。
知恵袋でよくある誤解と真実

Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでは、負担限度額認定に関する様々な質問と回答が見られますが、中には事実と異なる情報も含まれています。よくある誤解について整理してみましょう。
誤解1:「役所は銀行口座を調べることができない」
これは完全に間違いです。前述のとおり、行政機関には法的根拠に基づく調査権限があり、必要に応じて金融機関に照会することが可能です。
誤解2:「複数の銀行に分散すればばれない」
複数の金融機関に預貯金を分散させても、調査が行われれば発覚する可能性は高いです。むしろ、意図的に隠そうとする行為として、より厳しい処分の対象となる可能性があります。
誤解3:「現金で持っていれば大丈夫」
手元現金であっても、預貯金等に該当します。また、大きな金額を現金で保有していること自体が不自然であり、調査の対象となる可能性が高まります。
重要なのは、こうした小手先の方法ではなく、制度を正しく理解し、適正な申請を行うことです。不正受給のリスクを考えれば、正直な申告が最も安全で確実な方法と言えるでしょう。

インターネット上の情報には間違ったものも多く含まれています。負担限度額認定は重要な制度ですから、正確な情報に基づいて適切に利用することが大切ですね。不正受給のリスクを考えれば、正直な申告が一番安心です。
発覚時のペナルティと実際の処分事例
預貯金等の虚偽申告や申告漏れが発覚した場合、どのような処分を受けることになるのでしょうか。実際の事例と併せて、そのリスクの大きさを理解しておきましょう。
認定取り消しと給付費返還の実態

虚偽申告が発覚した場合、まず負担限度額認定が即座に取り消されます。この取り消しは発覚時点からではなく、認定開始時点に遡って行われるのが一般的です。
認定取り消しに伴い、それまでに軽減されていた食費・居住費の給付分については、全額返還を求められます。例えば、1年間にわたって不正に軽減を受けていた場合、数十万円から100万円以上の返還が必要になることもあります。
返還金には延滞金が加算される場合もあり、経済的負担は軽減どころか大幅に増加することになります。また、一度不正が発覚すると、その後の申請において厳格な審査が行われることが予想されます。
厚生労働省の調査によると、毎年全国で数百件の不正受給事例が発覚しており、その多くが預貯金等の申告漏れや虚偽申告によるものです。「ばれないだろう」という安易な考えは非常にリスクが高いことがわかります。
自治体による監査強化の動向

近年、各自治体では負担限度額認定における不正受給防止対策が強化されています。マイナンバー制度の活用により、これまで以上に効率的で正確な資産調査が可能になっているのが現状です。
多くの自治体では、申請時の書類審査だけでなく、定期的な抽出調査や更新時の重点チェックを実施しています。また、税務情報との照合や金融機関への照会も、必要に応じて積極的に行われるようになっています。
特に、預貯金額が基準額ギリギリの申請や、短期間で大幅に資産が減少している申請については、重点的にチェックが行われる傾向があります。不自然な資産移動がないかどうか、詳細な調査が実施される場合もあります。
監査強化の具体的取り組み
・マイナンバーによる所得・資産情報の照合
・定期的な抽出調査の実施
・更新時の重点審査
・金融機関への照会権の積極的活用
・AIを活用した不正検知システムの導入
・他の社会保障制度との情報連携
このような監査体制の強化により、従来は見落とされていた不正事例も発覚しやすくなっています。「少額だから大丈夫」「バレる可能性は低い」という考えは、現在の監査体制では通用しないと考えるべきでしょう。
法的リスクと社会的影響

預貯金等の虚偽申告は、単なる行政処分にとどまらない深刻な問題となる場合があります。悪質性が高いと判断された場合、刑事事件として扱われる可能性もあるのです。
介護保険法違反として、詐欺罪や有印私文書偽造罪などが適用される可能性があります。実際に、悪質な不正受給事例では刑事告発が行われ、有罪判決を受けたケースも報告されています。
また、刑事処分を受けなくても、不正受給の事実は地域社会での信用失墜につながる可能性があります。介護サービスを提供する事業者との関係にも影響を与え、今後のサービス利用に支障をきたすおそれもあります。
経済的な軽減を求める気持ちは理解できますが、そのためのリスクがあまりにも大きすぎることを理解していただけるでしょう。
適正申請のための具体的対策と準備
リスクを避け、制度を適正に利用するためには、どのような準備と対策が必要でしょうか。正しい申請方法と注意点について詳しく解説します。
預貯金等の適正な整理と申告方法

負担限度額認定の申請を検討している場合、まず自分と配偶者の資産状況を正確に把握することから始めましょう。すべての預貯金等を漏れなくリストアップし、基準額との比較を行います。
預貯金等の整理にあたっては、過去の通帳記録も確認が必要です。申請前に大幅な引き出しや移動があった場合、その理由や使途について説明を求められる可能性があるからです。
生活に必要な支出や医療費の支払いなど、正当な理由による支出であれば問題ありませんが、申請のために意図的に資産を隠す行為は不正とみなされます。自然な資産変動であることを証明できる資料を整理しておくことが重要です。
なお、基準額を超えている場合でも、合法的な支出により基準額以下にすることは可能です。例えば、必要な住宅修繕費、医療費、介護用品の購入などは正当な支出として認められます。
書類準備と申請手続きの注意点

申請書類の準備にあたっては、最新の情報を正確に記載することが重要です。古い情報や推測での記載は避け、申請時点での正確な金額を記入しましょう。
通帳のコピーを提出する際は、表紙と最新の残高がわかるページを含め、必要なページをすべて提出します。一部のページを意図的に除外することは、虚偽申告とみなされる可能性があります。
また、申請書の記載内容と添付書類の内容に矛盾がないよう、提出前に十分にチェックしてください。小さな記載ミスであっても、意図的な隠蔽と疑われる可能性があります。
書類準備の重要ポイント
・申請日から1か月以内の残高証明を取得
・通帳は表紙から最新記録まですべてコピー
・有価証券は時価評価額で記載
・保険は解約返戻金額を保険会社に確認
・夫婦それぞれの資産を正確に分けて記載
・不明な点は事前に窓口で確認
わからない点や不安な点がある場合は、申請前に市区町村の担当窓口で相談することをおすすめします。適正な申請方法について丁寧に説明してもらえるはずです。
更新時の継続的な管理方法

負担限度額認定は原則として1年更新となるため、毎年新たに預貯金等の申告が必要です。継続的に制度を利用する場合は、日常的な資産管理が重要になります。
更新時の申告においても、前年度からの変動について説明を求められる場合があります。大きな変動がある場合は、その理由を明確に説明できるよう記録を残しておくことが大切です。
また、認定期間中に預貯金等が基準額を超えた場合は、速やかに市区町村に報告する義務があります。この報告を怠ると、不正受給とみなされる可能性があるため注意が必要です。
適正な管理を継続することで、安心して制度を利用し続けることができます。手間はかかりますが、不正のリスクを考えれば必要な作業と言えるでしょう。
専門家相談と適正利用のサポート
負担限度額認定制度を適正に利用するためには、一人で判断せず専門家のサポートを活用することが重要です。制度の複雑さや申請の重要性を考えれば、専門的なアドバイスを受ける価値は十分にあります。
市区町村窓口での事前相談

最も基本的な相談先は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口です。制度の詳細や申請方法について、無料で相談を受けることができます。
特に、自分の資産状況が基準額に近い場合や、どの資産が対象になるか判断に迷う場合は、事前の相談が欠かせません。窓口では具体的な事例に基づいて、適正な申請方法をアドバイスしてもらえます。
また、申請書類の記載方法についても詳しく説明を受けることができ、記載ミスによるトラブルを避けることができます。不明な点は遠慮なく質問し、納得してから申請を行いましょう。
ケアマネジャーとの連携活用

担当のケアマネジャーも、負担限度額認定に関する相談相手として活用できます。ケアマネジャーは制度に精通しており、実際の申請経験も豊富です。
特に、施設サービスの利用を検討している場合は、ケアマネジャーとの連携が重要になります。負担限度額認定の有無により利用できる施設や負担額が大きく変わるため、計画的な申請が必要です。
ケアマネジャーは申請手続きの代行はできませんが、必要書類の準備や記載方法について助言を得ることができます。また、申請のタイミングについても適切なアドバイスをもらえるでしょう。
複雑なケースでの専門相談

資産状況が複雑な場合や、判断に迷うケースでは、専門的な相談サービスを活用することも有効です。特に、「基準額ギリギリだが適正に申請したい」「過去の資産移動について説明が必要」といった複雑な状況では、専門家の助言が欠かせません。
また、「申請したいが不正になるのではないかと不安」「知恵袋で見た情報が正しいか確認したい」といった心理的な不安についても、専門家から正確な情報を得ることで解消できます。
制度を適正に利用し、安心してサービスを受けるためにも、疑問や不安がある場合は一人で判断せず、専門家のサポートを積極的に活用することをおすすめします。

負担限度額認定制度は、経済的に困っている方を支援する大切な制度です。しかし、不正利用のリスクは非常に大きいので、必ず適正な方法で申請してくださいね。わからないことがあれば、遠慮せず専門家に相談することが一番安心です。
まとめ。適正利用で安心の介護生活を
介護保険負担限度額認定制度における預貯金調査について、その実態と対策をお伝えしました。「ばれない」という安易な考えは非常にリスクが高く、適正な申請こそが最も確実で安全な方法です。
行政機関には法的根拠に基づく調査権限があり、マイナンバー制度の活用により、従来以上に効率的で正確な資産調査が可能になっています。知恵袋等で見られる「隠す方法」は、いずれも発覚のリスクが高く、重いペナルティの対象となります。
虚偽申告が発覚した場合の処分は厳しく、給付費の全額返還に加えて延滞金、悪質な場合は刑事処分の可能性もあります。一時的な経済的軽減のために、長期的に大きな損失を被ることになりかねません。
制度を適正に利用するためには、正確な資産把握と適正な申告が不可欠です。不明な点や不安な点がある場合は、市区町村の窓口やケアマネジャー、専門相談サービスを活用して、正確な情報を得ることが重要です。
適正な申請により認定を受けることができれば、安心して制度を利用し続けることができます。経済的な負担軽減という本来の目的を果たし、質の高い介護サービスを受けながら、安心した介護生活を送ることが可能になるでしょう。
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